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第14話

年子って得だよなあ、と、僕、奏斗は早速、勉強机に座り、兄、優斗に借りた参考書を開いた。 しばらく熱心に勉学に取り組んでいた僕だったが、ふと手を止めた。 兄、優斗の筋トレする姿を思い出していた。 寝癖だったのか凄い状態の髪を整えた、自分の右手を凝視した。 「サラサラだったなあ....」 左手で自分の髪を摘む。 僕はどちらかといえば硬い髪質、異なる兄の柔らかい髪....。 ぶんぶん、と首を振り、再度、机に向かった。 そして、朝。 登校前、家族全員で朝食の時間。 ふと、隣に座る、お兄ちゃんを見る。 ....ネクタイが曲がっていない、寝癖もない。 箸は....と、お兄ちゃんの手元を見た。 逆さに持っていない。 ....どういうことだ。 徐々に視線を落としていき、思わず、顔を上げた。 家族団欒の朝に、兄の股間を凝視する訳にいかない。 電車まで並んで歩く登校中にスラックスのファスナーはチェックしよう、と僕は気持ちを切り替え、朝ごはんを食べた。 登校中、笑顔で並ぶ僕たち、さりげなく、スラックスのファスナーを確認した。 (開いてない....!) 僕は驚愕の眼差しになり、兄を見た。 「どうした?奏斗」 優しい笑みのお兄ちゃんがいる。 「う、ううん、なんでもない」 慌てて、笑顔に切り替えた。 一抹の不安が襲った。 ....筋トレ中に頭をぶつけたのかもしれない。 僕は半ば、呆然となりながら、兄と登校した。

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