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第13話
「お兄ちゃーん、参考書、貸して...え?筋トレ?お兄ちゃん」
不意に部屋に入ってきた奏斗が腕立て伏せしている俺に目を丸くした。
「え?ま、まあな」
実はお前を守る為なんだぜ、と余裕の笑みを浮かべたが、5、6回したら、息を切らしているのを悟られる訳にはいかない。
ふと、奏斗が近づいてきた。
「....どうしたの?髪、強風に煽られながら歩いた人みたいになってるけど」
そういえば、奏斗を心配し、髪を掻き乱してしまったんだった....。
奏斗の腕が伸びてきて、片手で手ぐしで髪を整えてくれる。
「あ、参考書...借りていい?」
「え?あ、ああ、本棚から適当に選んでいいよ」
「うん!」
にっこり微笑むと奏斗は本棚の前にしゃがみ、背表紙を真剣に見つめている。
その凛とした横顔を眺めた。
「じゃ、これとこれ、借りてくね、早めに返すから」
「急がなくていいよ」
「うん、ありがとう、お兄ちゃん」
参考書を胸に抱き、奏斗が自室に戻っていった。
....よし!
きついけど、あと、5回、腕立て伏せと、今日は腹筋もいつもより少し多めに鍛えよう....!
奏斗が去ったあと、俺、優斗は必死に体を鍛えることにした。
全ては可愛い弟、奏斗を守るため....!
明日からはネクタイもしっかり結び、箸も逆に持たないように気をつけ、スラックスのファスナーのしまい忘れにも気をつけねば!
兄の俺、優斗は燃えていた。
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