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第12話
『しかし、あいつは俺に嘘をついた』
泣きそうになりながら慶太にLINEで話しを聞いて貰う俺。
告白しよう、とひたむきにアレコレ考え、奏斗を見つめていた田口くん。
兄の優斗からは奏斗の背後霊呼ばわり、弟の奏斗からは1秒で告白を終わらせられた、実は少々、不憫な田口くんだが、俺は知る由もない。
『嘘?どんな?』
慶太はベッドに寝転がり、相撲の力士の写真集を眺めながらLINE中だ。
『田口を知らない人、て言ったんだ、俺に』
『知らなかったんじゃない?』
力士の写真集で少々、興奮してきた慶太は次第に投げやりになっていく。
『クラスメイトなのにか?』
『クラスメイトなのに。ほら、奏斗、クラスに友達いないじゃん』
『ハブられてるみたいに言うなよ!』
『そういう訳じゃないけど、既にファンクラブあるくらいだもん。いない方が優斗は安心なんじゃない?』
(っていうか、しこりたいんだけど!)
力士の写真に興奮している慶太も釣られてキレる。
『付き合ってるとか...ないよな?』
『知らないけど、ないんじゃない?』
『知らないけどってなんだよ。わかった、予約してる来年の力士のカレンダー、キャンセルするわ』
慶太は慌てて、ベッドから起き上がった。
『付き合ってる訳がないじゃん!あんな奴!有り得ないよ、絶対!』
『マジで?』
『神に誓う、力士さんにも誓うよ』
『そっか』
『カレンダー楽しみにしてるね♡』
ホッとした。
そりゃそうだよな、考えてみたら、付き合ってたら、誰かしらの後輩から情報が入るに違いないんだから。
そうと分かれば....!
俺は椅子から降りるとカーペットの床に移動し、腕立て伏せを始めた。
あいつ、奏斗がなにかあったときは俺が、兄の俺が守ってやらないと....!
そんなときだった。
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