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第44話
「お、俺...奏斗のことが好きだった、んだと思う」
「...過去形?」
「...現在進行形」
たちまち、暗澹たる表情から一変し、奏斗に満面な笑顔が浮かんだ。
「僕も同じ。現在進行形!」
両親には内緒のΩカップルが誕生した。
ようやく、優斗は奏斗が肩を借り、眠っていたとき、その寝顔があまりに可愛く、気がついたら無意識のうちにキスをしてしまったことを奏斗に打ち明けた。
「こ、今度は、ちゃ、ちゃんと起きてるときにしてよね」
そっぽを向き、怒りに満ちた声とは裏腹に真っ赤な頬は微かに綻んでいる。
「う、うん」
翌日、二人は意を決して、恭一、大貴、慶太に交際を始めた旨を報告したが、
「へー、マジか」
「良かったじゃん」
「やっと?」
特に驚かれず、優斗と奏斗は顔を見合わせた。
「気づいてないと思ったか」
ニヤリ、恭一がほくそ笑み、
「で、何処まで行ったの?」
身を乗り出し、慶太が尋ねると、
「今度の休み、遊園地、行く予定です。ね、お兄ちゃん」
「ああ、その次は何処にしよっか」
「水族館とかは?あ、猫カフェもいいね、お兄ちゃんが猫とじゃれてるとこ、見てみたいな」
慶太は拍子抜けし、突っ込みどころを忘れた。
それぞれ、せいぜい、軽いキスをするかしてないか、手を繋ぐか繋いでいないかのお子様だろうな、と二人を見つめた。
「ま、ゆっくり育む愛もあるってことで」
奏斗と結ばれたことで、優斗も極端なα恐怖症は解消し、とりあえずは話しかけられ、トイレに駆け込み、引きこもってしまうことは無くなった。
恭一の言葉に、確かにね、と大貴と慶太も、仲良くデートプランを話し合う優斗と奏斗を柔らかい笑顔で見守った。
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