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第43話

広夢が訪れた際も、優斗は広夢にαを感じ取り、顔を強ばらせ、慌てて背中を向けて駆け出すと部屋に閉じこもり、広夢は鈴原家を訪れることは無くなった。 突如、お兄ちゃんは憔悴しきった顔と声で切り出した。 「...俺、一生、結婚できないかも」 僕も恭一さん、大貴さん、慶太さんもポカン、とし、兄を見た。 「α、怖いし...」 「無理に結婚しなくてもいいんじゃない?独身貴族って言葉もあるくらいだし」 慶太さんの言葉にもお兄ちゃんは返答はせず、項垂れている。 「そうだよ、結婚が義務な訳じゃないし、別に今、考える必要もなくない?」 「αが駄目ならΩがいるじゃん」 恭一さんのセリフに、何故か、僕に兄を除く、三人の視線が突き刺さった。 ※ 奏斗が優斗の教室に優斗を迎えに行き、二人が学校を後にした恭一たち。 「互いに、悪い男に騙されたら、とか、悪い虫がついたら、とか、監視し合ってんの、どう考えても言い訳だよね」 「両思いなのに、気づいてないのは二人だけってか」 「奏斗、一時期、仲間かなあ、と思ったけど、やっぱりそうだよね」 「なんだかんだ、お似合いだよな。優斗に何かしようとする奴がいれば、速攻、奏斗の必殺の飛び蹴りが下されるだろうし」 「優斗が思ってる以上に案外、奏斗、しっかりしてるもんね」 「授業中も結局は優斗が気になって仕方ないだけだろ、奏斗」 「愛ですねえ」 「愛ですなあ」 三人はとっくに気がついていたが、気がついていない振りをしていただけだ。 ※ 肩を並べ、下校する二人。思いがけず、口数が少ない、というより、互いに無言だ。 「...お兄ちゃん、結婚したいの?」 チラリ、隣の兄の顔を伺うが、煮え切らない表情の兄がいる。 咄嗟に優斗の前に奏斗は立ち塞がり、仁王立ちした。 怒りを露わにした奏斗に優斗は面食らっている。 「お兄ちゃんは僕が誰かと付き合ったり、結婚しても平気なんだ!?」 暫し、ぱちぱちと優斗は瞬きを繰り返した。 「ふーん、そっか、わかった、僕、素敵な相手、見つけるから!」 「奏斗...」 「僕がお兄ちゃんの傍から居なくなっても、お兄ちゃんは平気なんでしょ!?僕、ずっと、お兄ちゃんに尽くしてきたつもりだったけど、これからは別の人に尽くすから!」 くるり、奏斗は踵を返し、背中を向けた。 「....平気じゃない」 ゆっくり優斗を振り返る。 そこには俯いた顔を真っ赤に染めた兄の優斗が立ち尽くしていた。

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