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 抜き打ちの小テストがあった。  配られたA4のプリントは、何度見ても覚えのない問題ばかりで。  始まるまではブツブツ言ってたくせに、周りは静かに、けれど確実にペンを走らせていた。 (どーしよ)  窓から外を眺めて、溜息を一つ。  手に持っていたシャーペンを、くるりと一回転させてから、溜息をもう一つ。  そこまで馬鹿じゃないと思ってたけど、自分も案外馬鹿だったか、なんて妙な悟りの境地に陥っていれば 「こら」  不意に小さな声で笑うように怒られて、ギクリと肩が揺れた反動でシャーペンが落ちた。  固まったままで見つめていれば、ホントに微かに悪戯めかして笑った先生が、ゆっくりとかがんでシャーペンを拾い上げて机の上に置いてくれる。 「頭は使うためにあるんだから」  ちょっとは考えてみ? と優しく微笑われて、渋々問題に目を落とした。  それを見た後で、よしよし、と満足そうに笑った先生は、ゆっくりと席を離れていく。  気配が離れていくのが寂しくて、今度は別の意味で溜息を吐いていた。  もっと近くに来て欲しい。  誰にでも向ける笑顔じゃなくて、オレのためだけに笑顔を向けて欲しい。  すたすたと、教室の中を歩く音を聞きながら、今度こそコトリとシャーペンを置いた。  白紙のテスト用紙には、自分の名前だけが書いてある。  もっと構ってよ。  そんな想いを込めて、答案用紙に書き加えた文字は----。

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