4 / 4
love you, too
「教えてよ。オレのこと、好き? 嫌い?」
唇がゆっくりと離れていった後、だめ押しするみたいに聞かれて、もう何も言えなくて。
「どっち?」
重ねて問われて、ようやく口を開いてから、
「……す、き……だよ」
掠れる声をどうにか喉から絞り出して呟いた。
熱に浮かされたみたいに熱いのに、オレは最初から相沢のこと気にしてたんだ、なんて今更ながらに思っていた。
好きな人はいるのかと生徒に聞かれたことくらい、無視しておけば済んだはずのことだし、怒って済ませてしまえばいいことだった。
まして告白された後だって、突き放してしまえば済むことだった。
なのに、こうやってる。
「すき、だよ」
たぶん、そういうことなんだ。胸の内でそう呟いていると、あり得ないくらいに嬉しそうな顔で笑った相沢が、でも半泣きの顔で抱きついてきた。
「大好きだよ」
飾ることのない真っ直ぐな言葉を、愛しいと思った。
コツリコツリと近付いてくる足音。
抱き締められたままで聞いて、ハタと我に返った。
「--------っ、ヤバ」
自分は今、どさくさに紛れてなんと言っただろう。
そして今の今まで、何を思っていただろう。
愛しい? 教師の自分が、生徒に? しかも、学校の中で?
じゅんぐりに考えを巡らせた後で、自分を抱き締めていた相沢を突き放した。
「ヤバイってオレ! 何ほだされてんのっ」
「……ともや?」
「それも!! ヤバイって! 今どこにいると思ってんの!?」
あぁぁぁぁぁ、と頭を抱える自分を、相沢は小さな苦笑で見つめてくる。
「かわいーの」
「バッカ! そんな状況じゃないでしょ!?」
「大丈夫だって。なんとかなるよ」
何言ってんだよッ、と半泣きで見つめる先で、相沢はにっこり笑った。
「なんとかなるよ」
その笑顔で言われると、ホントになんとかなりそうな気がすると、一瞬思ったのは内緒にしておく。
「バレなきゃいーんだから。大丈夫だよ」
「……」
「心配性なんだから、朋弥は」
やれやれ、と大人びた表情で呟かれるのが何となく癪で。
「校内でその呼び方禁止ね。たとえ二人っきりでも」
それだけ言い置いて、さっさと教室を出る。
「待ってよ、とも----先生」
僕らの新しい始まりだった。
ともだちにシェアしよう!