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第1話 思っていたのと違うんだが
『この街の裏路地には、おっぱい好きにはたまらない風俗店があるらしい』
ある日友人から聞いた話を元に、俺はその店へとやってきた。
友人たちの間で無類のおっぱい好きとして有名な俺に、『いいところがあるらしい』と言われて紹介されたのが例の店だ。
──おっぱいでっかい可愛い子がいるといいなぁ〜〜。できればドスケベだと尚良し。
期待に胸を膨らませて入店し、可愛い感じの名前の子を指名して、基本料金の前払いをしたまでは良かった……のだが。
「本日担当をする『ミル』です。よろしく」
「……!!?」
俺より二十センチ以上は高い身長、腰に手を当てどっしりとした姿で話しかけてきた目の前の人物。
整えられた短髪、精悍な顔つきや低音ボイス、健康的に日に焼けた肌に、ムキムキに鍛えられた筋肉……どこからどう見てもガタイが良すぎるガチムチ男性である。
それに着ている物がおかしい。あのほっそいビキニみたいなものは何だ!?下なんてポロリ寸前じゃねえか!
まさかこんな感じの人が出てくるとは思わなかったぞ!!?
予想外の展開で唖然としている俺に、ミルと名乗る男は少し困ったように眉を下げて話しかけてきた。
「お客さん、ここがゲイ専門の雄っぱい風俗だって知らずに来たのか?」
「……はい、そうです。ダチに『おっぱい好きにはたまらない店がある』って聞いてきたんです」
「あー、『おっぱい』違いってやつか。たまーにいるんだよな、そういう客」
「……そうなんすね」
俺と同じような奴が他にもいるらしいことに、なんとも言えない気持ちになる。
「悪いんだが、店の決まりで料金払っちまったあとは返金ができないんだ。『そういうこと』はしなくていいから、世間話だけでもしていかないか?愚痴でもなんでも聞いてやるぜ?」
客と呼べるかも分からない俺に対して、ニカっと効果音がつきそうなくらい良い笑顔を見せてくれるミルさん。
その笑顔に俺の心は妙にザワついた。
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