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第23話 篠田の弟がブラコンすぎて困る(1)
こんなはずではなかった。
なぜこんなことに…
ある金曜の夜遅く、俺はパンツ一丁で玄関の外に放り出されていた。
~時を遡ること1時間前~
「あ、もしもしー?篠田、俺今お前んちの近くに来てるんだけど寄っていい?」
『え、先輩うちの近くいんの?わー、困ったなまだ俺今夜仕事終わんないんすよ』
「え!そうだったの!?勝手にもう帰ってるかと思って来ちゃった。部屋で待ってていい?」
『うん、ごめんね。なるべく早く終わらせて帰るから』
「あーいいよいいよ。じゃなー」
よーし、じゃあ材料買って飯でも作って待ってるかぁ。
鶏肉と大根のさっぱり煮と、サラダと味噌汁と…
って作ってもまだ帰りの連絡がない。
酒でも飲んでるか。
酎ハイを開ける。
まだ来ない。
ビールを空ける。
まだ来ない。
うーん、良い感じに酔っ払ったしもう先に風呂入っちゃお。
勝手に風呂の湯を張り、先に入る。
そして風呂上がりに着替えてたら、ドアの音がガチャガチャと聞こえて篠田が帰って来たのに気付いた。
俺は驚かせてやろうと思ってパンツ一枚でいきなりバスルームから飛び出して篠田に抱きつきキスした。
「おかえりー!」
首にしがみついてぶら下がったまま、口と、ほっぺに「んっんっんー♡」と機嫌よく口付ける。
あれ?乗ってこないな??
俺の予想ではぎゅっとされてチューし返してくると思ったのに固まってる。そんなビビった?
顔を見る。
「あれ?髪色暗くした?ってか、え?誰…?」
篠田みたいだけど、なんかちょっと違う。
あれ??俺そんな酔ってた???
「お前こそ誰だ」
うげ、怖い声!でも声も篠田とそっくりだ!!
「出てけ変態野郎!!!」
えっ?
気付いたら冒頭のように、パンツ一丁で部屋の外に出されてました…。
もちろん無情にも向こう側から鍵をかける音がしました…
夏だから寒くはない。だけど、この格好で居たら絶対人通ったとき変態だと思われる。
篠田はいつ来るかまだわからん。
ひーーー、勘弁してくれ!通報されるわ!!
ドンドンドン!!
「おい、開けろ!」
ドンドンドン!ドンドンドンドン!!
「ふざけんな、俺の服返せ!」
あー、もうこれ、今人通ったら完全に痴話喧嘩で女に放り出された奴にしか見えねえよ。泣きたいっ
「そこの方~~!お願いだから服と荷物だけ外出してぇ~!」
ドンドンドン!
「何やってんですか先輩…」
「ひぎぃっ!!し!しのだ!!本物…?」
心臓がバクバクする。
通ったのが他人じゃなくて良かった…
「何アホなこと言ってんです。その格好も何?サービスのつもり?ほらそこどけて。中から鍵かかってんの?」
ガチャっと篠田が鍵を開けてくれた。
俺を先に中に入れてくれる。
俺のじゃなく篠田のでもないデカい靴を見て篠田がため息をついた。
「あー…忙しすぎて忘れてた…あいつ来てんのか…」
すると奥から篠田に似た男が姿を現した。さっき俺を締め出した憎い奴だ。
「お帰り。兄貴なんなのそいつ。危険だから外につまみ出しといたんだけど」
人を…ゴミか虫みたいに……っ!!
え、待って兄貴?
ああ、そういや弟いるっつってた!
うわ、並んだらすげえ美形のオーラが倍増した!キラキラ超えてなんならギラギラする!!
「篠田の弟…イケメンが2人に増えた…」
俺は目が爛々として来た。
これは…楽しい予感…!
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