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第32話 2人の愛の住処に邪魔者現る?(1)

俺が酔ってベロベロな時に篠田からプロポーズされ、つい俺も結婚したいと口走ってしまったため2人で同居することになった。 どっちの部屋で暮らすか迷ったが、篠田の部屋の方で同居することにした。 篠田の部屋の方が少し面積的にも広かったし、俺のマンションからだと篠田の通う本社が今より遠くなってしまうのだ。 というわけで、俺より圧倒的に残業が多い篠田の生活に合わせる事にした。 広い部屋を新しく借りることも考えたが、総務課に同時に住所変更の届けをしたら「何で一緒に住んでるんだ?」ってなりそうで…部署も違うしそんなの気づかないとは思うけど念のため今はまだやめておいた。 引っ越しといっても家具類はほとんど篠田宅にある物を使えるからあまり大きな作業にはならなかった。 俺は物を捨てるのは得意な方なので、篠田の家のを使えるならと、家具類はどんどん廃棄した。 調理用具など細々した物で篠田の家に無いものはそのまま持って行くことにした。 衣類はさすがに全て持っていく必要があったのでそれはまあまあの量にはなった。 でもそれも引っ越し業者に頼むまでも無く段ボールに詰めて宅配便で送って、すぐ着る数着だけはスーツケースに詰めて自ら持参した。 これで引っ越しは土日のみでサクッと完了。 俺は晴れて篠田の同居人となったわけだ。 「乾杯~」 引っ越しが無事済んで、一応引っ越し祝いじゃないけど篠田と部屋で飲んでいる。 「先輩やっと本当の奥さんになってくれたんですね♡俺は嬉しいです」 「ばーか、大袈裟。ルームシェアなんて今時珍しくもないだろ」 「違いますよ!これは俺にとっては結婚ってことなんですから。ルームシェアなんて味気ない言い方しないで下さいよ」 「へっロマンチストだな篠田は」 「ふん、先輩なんて酔って可愛くなっちゃったら俺と結婚したいってすぐ泣く癖によく言うよ」 「おい、それを言うなっての!」 「あはは!先輩赤くなってますよ~?」 「クソ!酔ったからに決まってるだろ」 「酔った?これ2杯ぽっちでー?」 「うーるーさい!」 相変わらず俺たちはわーわー喧嘩しながら仲良くやってる。 そんな折、俺の支店に寿退社で抜けたベテラン行員の後釜として、新人の男の子が入ってきた。 何でこの時期に新人が移動してくるのか?と若干ざわざわしたが、まぁ上の方で色々あり玉突き人事で新人というババをうちの支店が引く羽目になったらしい。 ベテランが抜けての補充としては手痛い。 何とか早めに戦力になるよう鍛えなければならないのだが、男同士ってことで俺が教育係りに任命された。 「よろしくお願いしまっす!本庄茜(ほんじょう あかね)です!」 茜なんて名前だが、巨体の男だ。 ラグビー部で鍛えたというがっしりした身体つきで、目がクリクリした元気な若者だった。 「おう、よろしく。俺は池沢だよ」 「よろしくお願いします!池沢先輩!」 あー、なんか新鮮。部活の時を思い出すなぁ。 支店は女の子が多いから、男の後輩なんていつぶりだろ? 本庄は第一印象のままのハキハキした奴で、運動系の部活もやってたから上下関係にもきっちりしてる。勤務態度も真面目だし、ちょっとバカで脳筋なとこはあるが可愛げのある奴だった。 「池沢せんぱ~い!今日お昼何食べるんすか?」 「俺は弁当だよ」 「えっもしかしてこれ手作り?」 「うん」 「うまそー!もしかしてもしかして彼女の手作りすか?」 「は?違うよ。自分で作ったんだよ」 「え!?これ池沢先輩が!?弁当男子だったんすか!?」 「弁当男子って…別に普通だろ」 「いやいやいや!普通作らないっすよ。そんな時間あったら俺なら寝てますもん!あはは」 「まぁ、眠たいよな」 俺は最近弁当を二人分作るようになった。篠田の体調も気になるし、一人分だと労力がもったいない気がしていたけど二人分ならコスパもいいかなと思って。 「俺まだ実家なんすよねー。母さんにお願いしても弁当なんてもう作ってくれないんすよ」 「はは、そうなんだ」 「先輩の弁当羨ましいっす~。卵焼きひと口下さいよぉ」 「は?やだよ」 「えー!ケチぃ!」 心優しい俺はそれから一回り大きめの弁当箱を用意して少し多めにおかずを詰めるようになった。 大型犬を餌付けするみたいな感覚だな、うん。

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