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第33話 2人の愛の住処に邪魔者現る?(2)

新人の本庄はたまにミスはやらかすものの一生懸命仕事を覚えてそこそこの戦力になるようになった。前の支店での指導も良かったようだ。 ある程度慣れてきたところで、金曜日の夜に歓迎会が開かれた。 本庄はザルで何でも飲んだし飲んでも顔色ひとつ変わらなかった。 「何だお前~酔わんのか?つまらんやっちゃな~」 「飲み足りないんだろ、もっと飲め飲め!」 「はーい!ありがとうございます」 上司に絡まれてもニコニコ対応してる。 大した奴だ。 俺は少し離れた席で後輩を眺めながら女性職員たちと談笑していた。 そしてうっかり飲みすぎて気付いたらテーブルに突っ伏していた。 あれ…やべ、身体がうまく動かないぞ… 「ねぇねぇ~、誰か池沢くん送っていける人ー!」 「はーい、俺行きます」 本庄の声だ。 「え?でも今日の主役が二次会行かなくてどうするの?」 そうだそうだ。 「いやー、俺実家なんすよ。終電逃したら怒られるんでここで失礼します!」 「あら、最近の子は真面目ねぇ」 えー?いいのか? 「せーんぱい!大丈夫っすか?も~仕方ないですねぇ。俺が送ってきますね」 え…?お前向こうで支店長と飲んでたんじゃ… 「じゃあ、本庄くんお願いね」 「今日は皆さんありがとうごばいました!お疲れ様でした~」 ざわざわする店内を抜けて、本庄は俺を担いでタクシーに押し込んだ。 「先輩大丈夫?住所言える?」 俺は何とか住所を伝えてタクシーで送ってもらった。上司が気を利かせて、送り役を買って出た本庄にタクシー代を渡してくれていた。やべー。これは週明け俺が怒られるやつ… 「ほら、降りますよ!歩けます?肩貸しますから」 「ありやと~」 「何階の何号室?鍵は?鞄の中?」 「かばんのポケット~ななかい~ななまるに~」 「はいはい…」 本庄が俺を片手で肩に抱えたまま何とか部屋の鍵を開けようとするが、なかなかうまくささらずガチャガチャやっている。 すると中からドアが開いた。篠田だ。 「一樹さん?もう帰ったの?」 「あ…!」 「あ~しのだぁ~。池沢一樹、ただいま帰りましたっ!あはは」 「あの、自分は池沢さんの後輩の本庄です!池沢先輩をお送りしました!」 「あー…この酔っ払いを…ごめんね、ありがとう。コーヒーでも飲んでってよ」 「はい!」 俺は篠田の部屋のベッドに転がされた。 開け放ったドアからリビングの声が途切れ途切れに聞こえてくる。 「やっぱり本社の篠田さんですよね!前の支店にいた時……」 「君が新しく……池沢さんの…」 そして俺はそのまま意識を手放し眠りについた。 翌朝目を覚ますと、横に篠田の姿は無かった。 休日なのに珍しく先に起きたのかな?と思ったが、そうではなく篠田は別室で寝たらしい。 というのも、リビングのソファで大男が寝こけていたのだ。 「あ…本庄…?」 そうか、昨夜俺を送ってくれてそのまま泊まったんだ。 篠田は本庄の手前俺と一緒のベッドに寝るわけにもいかず、いつも弟が泊まるとき用の布団を別室に敷いて寝たらしい。 俺が飲みすぎたせいで皆さんすいませーん… お詫びの意味を込めて朝食の支度をした。 キッチンが騒がしくなったのでまずリビングの本庄が目を覚ました。 「おはようございます…」 「あ、起きたか。おはよう。昨日はすまなかったな」 「あ、いえ全然。むしろ俺こそ泊めていただいてすみませんでした。篠田さんと話してたら終電逃しちゃって。ルームシェアしてたんですね」 「ああ、そうなんだよ」 「びっくりしました。鍵開けようとしてたら本社の見たことある人がドア開けて出てきたんですもん」 「あはは、そうだよな。ごめん言っておけばよかったな」 その後篠田も起きてきて皆で朝食をとった。 本庄は食べながら言う。 「自分実家暮らしなのでルームシェアなんて羨ましいです。俺もここに住みたいです~。篠田さん、床で寝ても良いからここに俺も住んじゃだめですか?」 篠田は笑って流していた。 おいおい、いくら人懐っこいからって図々しい奴だな。 コミュ力おばけ過ぎてこええわ。 その翌週、普通に仕事していたら、給湯室で本庄が後ろから声を掛けてきた。 「あれ?先輩ここ、赤くなってますよ。虫刺されかな?」 いきなりワイシャツの首の後ろに指を入れられて俺はビクッとした。 「え?あ、ああ。そういや昨日部屋の中にデカい蚊がいたよ」 「ふーん、そうですか」 篠田め、見える位置に痕付けたな? いや、本庄がデカ過ぎて普通の人なら見えない角度から見えたのか… その時はただそう思っただけだったが、それから不思議と本庄が俺に触ってくるようになった。 気のせいかも知れないレベルだが、物を受け渡すときに手を触られたり、何かある度に肩に触れてきたり腰に手を回されたり… なんとなくちょっとゾワッとするような触れ方をしてくるのだ。 「いやいや、自意識過剰だよな」 篠田に打ち明けたほうが良いのか迷っていた。 でもわざわざ言うほどのことでもないよな、とそのまま様子を見ることにした。 そんなある日、本庄が仕事のことで悩みがあるから相談に乗って欲しいと言ってきた。 篠田にも聞いて欲しいとのことで、俺達の部屋にまた来たいという。 まあ篠田もいる自宅なら2人で飲み屋に行くより安心か、と思って了承した。 一応篠田にはLINEで本庄が来ることを伝えておく。 忙しいのか、俺たちが帰宅してもまだ篠田からの返事は無かった。 俺は帰宅してすぐにあるもので適当に軽い食事と、酒のアテになるものを作った。 そして篠田を待たずに本庄と先に飲み始める。 本庄は食べっぷりも良くて料理の作りがいがあった。そして相変わらず酒もゴクゴク飲む。 つい俺もつられてペースがいつもより上がっていたのか、また飲みすぎてしまった。 「先輩お酒弱いんじゃないすか?もう酔っちゃったの?」 「あ~?んなことねえよ、お前が飲み過ぎるから釣られたんじゃねーか」 「あはは、ぐっだぐだですね。赤い顔して可愛い」 「うるせー、もう1杯飲む…」 「やめときましょー?篠田さん帰ったらびっくりしちゃいますよ」 「ああ?篠田はまだかよそういや…」 「まだですよ。今日は残業で遅くなるって」 「え~?俺には返事まだ来てないんですけど~~~?」 「ああ、もう、こらこら…それ俺のスマホっすよ」 「しのだのばかぁ…もうしらない…」 「あーあ、寝ちゃった。篠田さん遅くなるって言ってんのに…こんな無防備で大丈夫?俺、襲っちゃいますよ?」 「んん…」 身体がふわっと浮いた感じがした。 なんだ? 抱っこされてる?篠田…?

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