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【番外編】20.《最終話》現実の世界へ
「いっちゃん!いっちゃん!」
肩を揺すられて目を覚ます。
俺は車の助手席でサイドウィンドウにもたれ掛かって眠っていた。
周囲を見回すと、そこは廃工場前の広場だった。
肝試しで来たとき車を停めた位置だ。
辺りは既に白み始めていた。
「え…?ここって…え、元の世界に帰れた?」
「うん!たぶん」
「ここ、廃工場の駐車場だよね?俺達ここから車で走ってトンネルを抜けたはずなのに…」
俺は二人の顔を交互に見た。
「ゲームの世界、行ったよね?俺の夢?」
二人は首を振った。
「いや、夢じゃない。一樹、膝の怪我は?」
服は家から着てきたものに戻っていたが、ズボンの裾を捲って膝を見たら傷がついていた。
「あ、傷だらけ…」
やっぱり、夜中に走り回ったのは夢じゃなかった。
「そうだ、スマホは使える?!」
3人ともスマホを確認すると、微弱だが電波もあり、マップも正確に現在地を示していた。
時刻は肝試しをした翌日の朝5:28だった。
「戻ってきた…戻ってこれたんだ!」
車の中で3人で肩を組んで喜び合った。
明るくなりかけた林道を走り、俺達は帰路についた。
* * * * *
「はぁ~~~~、うんっまい!!」
「今まで食べたオムライスの中で一番うまい」
俺達は家に帰り、シャワーを浴びて清潔な服に着替えた。
そして、爆睡した。
幸い今日は、カフェの定休日だった。
目が覚めて、まずしたことと言えばオムライスを食べることだった。
「俺も…我ながら美味い」
そして3人で笑った。
「はぁ、それにしても帰ってこられてよかったよ」
「最後はもうだめかと思ったね」
「神主しつこすぎ!つーかマジでキモい」
トラウマになりそうだよ。
ゲームでも最後あの神主現れるのかな?
「神主、井戸の中にあゆみと一緒に封印されたって事だよなぁ」
「結局あゆみは望み通り…結婚ではないけど神主と永遠に一緒になれたってこと?」
「うへぇ、ゾワっとする」
オムライスを食べ終え、洗い物は2人がしてくれた。
今日両親は2人揃って泊まりがけで温泉に出かけている。
俺は兄弟にこの後の予定を聞いた。
「なぁ、2人とも今日はこの後どうする?もう夕方だけど行きたいところでもある?こっちの友達と飲みに行くなら車で送るけど」
よく似た兄弟は顔を見合わせてからにこっと笑う。
美しい顔が二つ。
「いっちゃんのご両親が出掛けてるのに、俺たちが出掛けるとでも?」
「は?」
何でうちの両親が関係あるんだ?
「なぁ、一樹はさっき神主に言われてどっちを選んでた?」
え…
「俺?」
「それとも俺?」
「そ、そんなの……」
2人とも意地の悪い顔で俺が困るのを見て笑ってる。
「選べないよ…」
悪い顔をしたままで、2人は俺の手を引いて歩いていく。
そして寝室の布団に俺を転がした。
仰向けになった俺を2人の美しい男が夕日を浴びながら見下ろしている。
「いっちゃんは俺たちのことが好きでしょ?」
「へ?」
いきなり言われて、平静を装えず俺は狼狽えた。
顔がだんだん熱くなってくのを感じる。
「な、何?急に」
「俺たち2人共まとめて好きなんだろ?」
「は…?」
「認めろよ」
2人が俺に覆い被さってくる。
剣志には顔にキスされ、佑成には太ももに吸いつかれる。
「いっちゃんのここ、虫に刺されてる。すげーエロい…」
部屋着のハーフパンツの裾を捲り上げ、腿の内側を舐められた。
「ひゃっ」
「せっかく綺麗な脚なのに、ゲームのせいで傷だらけだね。かわいそうに…これから毎晩舐めて治してあげるね?」
え、えええ?!
「神主のやつ、本気でナイフ当てやがって。ここが少し切れてる」
こめかみにほんの少しだけ傷ができていたのだ。
結構ぐいぐい刃を当てられたからな。
剣志はその傷を舐めた。
「んっ」
「大事な一樹の顔に傷を付けるとは…殺しても殺したりねえな」
剣志は顔を手で挟んで色んな角度から俺の顔を検分している。
「ああ、本当に」
「一樹あいつに犯されかけただろ?これから俺たちであいつが触ったところ全部消毒するから」
「消毒?」
そしてその日は剣志と佑成に散々身体を舐められーーー尻の穴の中まで!ーーー俺はついさっきまでゲームの世界に行ってたのなんて忘れそうになるくらい、快感に喘がされた。
「もうダメ、許して…もう…あっ♡また…イくっイっちゃう!」
「ああ、いっちゃんもう精液出し切っちゃって出ないからドライでイってるね」
「あっ。ぁん…だめ、おちんちん触っちゃだめ…もうイったから…ダメ…んんっ♡」
「ゲームの中で触ってっておねだりするいっちゃんも可愛かったなぁ。これからは遠慮なくいつでもおねだりしてね。俺たちが好きなだけ触って気持ちよくしてあげるから」
「一樹、そんなエロ顔してダメなんて言っても男は喜ぶだけだからな。他の奴の前でそんな顔するなよ」
「はぁ…はぁ…しな、しないよ…ばか…」
2人とも、俺を何だと思ってるんだよ!
「ああ、いっちゃんのこと早く東京に連れて帰りたい」
「それはまだ無理だろ」
何言ってるの?連れて帰る?
「いっちゃん、いつか絶対迎えにくるから俺たちと一緒に暮らそうね」
「断っても無駄だから覚えとけよ」
「それまで、変な男に引っかからないように」
「女にもな」
オーガズム後の朦朧とした頭に、2人でいっぺんに話しかけられて内容が理解しきれない。
「好きだよいっちゃん」
「俺たち2人共、お前のこと好きなんだから受け入れろよ」
よくわかんないけど、2人が好きってのはわかる。
「好き…?俺も2人とも好き……」
知ってるよと2人に言われて両側から頬にキスされた。
〈完〉
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最後までお読み頂きありがとうございました!
悪ノリで始めたスピンオフ。
夏にゾワっとするホラー…といってもアホすぎるお話しでしたが如何でしたでしょうか。
雰囲気だけでもお楽しみいただけたら幸いです!
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