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第71話 彼氏がいるとバレたら高校時代の友達に告白されて困ってます(2)

朝目を覚ましたら篠田の背中が目の前にあった。 寝ぼけ眼で俺は手を伸ばして抱きついた。 今日は土曜だからもう少し寝よう… そこでなんとなく違和感を覚えた。 背中の感触も、匂いも違う…? 目を開けて見ると、肩幅が篠田より広くがっしりしている。 髪の毛が黒く、篠田より短い。 剣志?ちがう。剣志でもない。 男が振り向いた。 「菊池…!」 「おはよう」 「え、俺…なん…」 俺も菊池も裸だった。 「よく眠れた?昨日はすごく良かったよ。一樹ってセックスのときあんなにエロくなるんだな」 全身冷水を浴びたみたいにぞっとした。 「うそ…おい、やってないよな?俺…え?なんで?ここどこ?」 「落ち着けよ。俺の部屋だ」 なんでこんな余裕なのこいつ? ていうかどうしよう。泊まるなんて言ってないから篠田心配してる。 ちがう、そうじゃない。俺、ここで何したって? 「菊池、悪ふざけやめてよ。本当はやってないんだろ?」 「くっくっく…わかったよ。からかっただけ。やってないに決まってるだろ」 「はぁ…よかった……」 死ぬかと思った。 つーか本当にやってたら篠田に殺されるっつーの。 「でもエロいとこ見たのは本当」 「は!?」 「彼氏と勘違いしてお前が乗っかってきたんだよ」 「嘘!ご、ごめん菊池…」 最悪。穴があったら入りたい… 高校時代からの友達だぞ。何やってんだよ俺。 「可愛い所見れて俺はラッキーだったよ」 「やめろって」 「ヤらずに我慢した俺を褒めてよ」 「ふざけろよ。俺相手に勃たないだろ」 「勃つよ。俺、お前のことずっと好きだったから」 え……? 「びっくりした?これは冗談じゃないよ」 「え…なに言って…」 「俺高校の時からずっとお前のこと好きだった。でもお前がノンケだから黙ってたんだ。それなのに俺が結婚だ離婚だってゴタゴタしてる間に他の男に取られるとはね」 「菊池…」 「なあ、俺ならお前の彼氏よりずっとお前のことよく知ってるし幸せにする自信あるよ」 「は?どういう意味?」 「お前が男もいけるならもう遠慮しないってこと。俺のほうが篠田って奴よりお前のこと好きだから…俺を選んでよ一樹」 何言ってるんだ…こいつ…? 俺が戸惑っていると菊池は起き上がって俺を押し倒した。 「好きだよ一樹…ずっとこうしたかった…」 首筋に鼻を擦り付けてくる。 「ちょっと、やめろって!ふざけるなっ」 「キスしていい?」 「ダメに決まってんだろ!!」 肩をぐっと押し退ける。 「お願い。一回だけ…吐いたお前の服脱がせて綺麗にしてやった俺にご褒美頂戴」 俺は首を振って拒否する。 「ちぇ、素面だと結構ガード堅いな。いいじゃん、男は篠田ってやつしか知らないんだろ?試してみようよ。俺との相性」 「だーめ!!」 「はぁ…。じゃあさ。考えてみてよ。その篠田ってのが現れる前に俺が先に一樹のこと抱いてたら?」 え…? 「俺と付き合ってた?」 「そんなの…わかるわけ…」 「ふっ。真面目に考えてるのか。可愛いな。ああああ!やっぱ悔しい!横取りされた気分だよ!!」 「なんか…ごめん。俺全然気づかなくて」 俺は自分の無神経さが申し訳なくて謝った。 「俺が気取られないようにしてたんだから一樹が気づくわけないだろ」 「うん」 「でも本当に考えてみてよ。篠田ってやつがイケメンなのはわかったけど、俺だって男としてそんなに悪くないだろ?」 「…うーん、それは…」 菊池は俺の返事をろくに聞かずにベッドを出た。 「さー、お前のゲロついた服、洗濯しといたからな。もう乾いてるから着れるよ」 「ありがとう」 「彼氏心配してんじゃない?連絡してやんなよ」 あ!そうだった。やばい! スマホを見たら着信が何十件も残ってた。 LINEの未読も50件以上… 俺はすぐに電話した。怒ってたけど、それよりホッとしたみたいだった。 朝食を食べて、菊池が車でマンションまで送ってくれた。 「じゃあ、また飲もうな。本気で考えてみてよ、俺に乗り換えるの」 「今朝みたいなタチ悪い悪戯するならもう会わない」 「ははは!じゃあな。また連絡するよ」 菊池の車は走り去った。 篠田がくれた指輪…これでもう言い寄られなくなるって思ったのに… 逆にこの指輪のせいで男に告白されちゃったんだけど。 「はぁ…」 俺は朝日を浴びて光る薬指を見てため息をついた。

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