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第72話 彼氏がいるとバレたら高校時代の友達に告白されて困ってます(3)

「ただいま…」 俺はおずおずと玄関ドアを開けて中に入った。 「おかえり!先輩!!心配したよ。よかったぁ…」 篠田がぎゅうぎゅう抱きしめてくる。 「ごめん篠田。酔いつぶれちゃって…」 「友達のところ泊まるのくらい全然良いけど、連絡だけはしてよね。本当に気が気じゃなかったよ」 ホラーおばさんのことがあってから特に篠田は心配性に拍車がかかってる。 「ごめん、途中から記憶無くなってて連絡くれたのも気づいてなくて」 「うん。きっと友達と飲んでてつぶれてるだけだとは思ってたけどさ。つい剣志にまで連絡しちゃったよ」 「はは…」 ちょっと二日酔い気味だったので、家事をせずに寝ているように言われた。 心配掛けた上に家事までサボるとか俺ダメじゃん… 頭痛薬を飲んで、俺は眠りについた。 午後は体調が戻ったので服を着替えて少しだけ掃除をした。 晩御飯は手の込んだものを作る気力が無かったから、素麺にさせてもらった。 普通に食事して、一緒に片付けをしていつもの週末と同じように一緒にお風呂に入った。 そこで事件が起きた。 篠田は俺の身体を洗うのが好きで、大抵全身洗ってくれる。 この日もいつものように身体を洗ってもらっていたのだが、足の付根の泡を流していた篠田が眉をひそめた。 「あれ…?」 「なに、どうした?」 「ここ…」 「ん?」 篠田が俺の内腿の、結構際どい部分を指でなぞる。 「ちょっと、くすぐったい!」 俺はふざけてるんだと思って笑いながら足を閉じようとした。 しかし篠田は怖い顔をして膝をぐっと開いてその部分を見つめている。 「篠田?どうしたの?」 俺もその部分を見た。 赤紫色の小さなうっ血が見えた。 え…これって… 「先輩これ、キスマークじゃないの?」 背筋が凍った。 あいつ――! 菊池の奴、やりやがった…。 「ち…ちがうんだ。篠田、これは…」 「先輩…これは虫刺されじゃないよ」 篠田の目は座っていた。 「知らない…俺はこんなの知らないんだって!」 「俺は付けてない。昨日誰とどこで何してたの?」 最悪だ… なんでこんなことに… 「先輩!答えてよ」 「篠田本当に、昨日は友達と飲んでただけ。ちゃんと全部話すから…」 風呂から上がってノンカフェインのコーヒーを入れた。 篠田は難しい顔をしてダイニングチェアに座ってる。 俺も向かいに座った。 「昨日飲んでたのは高校時代サッカー部で一緒だった菊池って奴なんだ」 「ふーん」 篠田から静かな怒りを感じる。 「2~3年前に結婚したんだけど、引っ越したっていうのがその…離婚して別居したって」 コーヒーカップから篠田が視線を上げた。 「それで?」 「その…離婚の理由が…セックスレスで…奥さんとうまくいかなくて…」 「だから?」 「それであいつ、男の人と試したら勃ったって…あの、実は元々バイだったんだって…」 篠田はため息をついて手で顔を覆った。 怒ってる?怖いよ… 「で、菊池が俺の指輪見て結婚するのかって」 篠田が覆っていた手を外して真剣な顔でこちらを見た。 「それ、なんて答えたの?」 「俺…あいつは仲良い友達だし騙せないし…正直に言ったんだ。男と付き合って一緒に暮らし始めたって」 篠田はちょっとホッとしたような顔をした。 「で?」 「それで、なんか…篠田のこととか色々聞かれて惚気話してたと思う。でも結構飲んでてそこからあんまり記憶無くて…」 「ふーん…その人俺がいることわかっててこういうことしたってわけか」 「ごめん…友達と思って油断したのは俺が悪かった。でも、バイだからって俺に手を出してくると思わなかったんだ」 「あのさ、その人って先輩に気があるの?」 「朝起きて…昔から俺のこと好きだったって言われた」 俺は篠田の目を見ることができず俯いた。 篠田はまた盛大にため息をついた。 「はぁ~~~…。どうすっかな」 俺、怒られるのかな…。でもこんなこと予想出来なかったし、篠田以外と会わないなんて無理だし… 「一樹さん、その人に電話掛けてよ。俺から話したいから」

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