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第77話 篠田のお母さんがご立腹(2)

なんか勢いで篠田を追い出してしまって、ご立腹のお母さんと2人きりになってしまった。 どうしよう… 「えーっと…すみません。佑成くんにあんな言い方しちゃって。でも、お母さんにあんな言い方するの許せなかったもので…」 俺は冷めてしまったコーヒーを入れ直して謝った。 篠田のお母さんはため息をついた。 「いいえ。私の方こそ、初対面なのにあなたに酷い態度だったわ。ごめんなさい」 そしてお母さんは俺のことをじっと見つめた。 「あなた、良い子そうね。思い込みでゲイなのを罵って悪かったわ」 「いや、俺ゲイじゃないんですけど」 「え?そうなの?だって佑成と…」 「俺は今まで男の人と付き合ったことないんです。女の子としか付き合った経験なくて…佑成くんと会うまでは」 「あら、そうだったの」 俺はさっき疑問に思ったことを聞くことにした。 「でもさっきお母さん、”また”って仰いましたよね?もしかして佑成くんは前にも男性とお付き合いを?」 「え?ああ。いいえ、違うのよ。佑成じゃなくて…衣織の方でちょっとあって…」 「衣織さんって、お姉さんのですか?」 「あら、知ってるの?」 「はい。この前ここに遊びにきてくれたんです」 お母さんは少し迷った顔をしてから口を開いた。 「そうだったのね。そう…佑成の恋人なんだしあなたにも話しても良いかしらね」 なんだろ? 「実は衣織はバツイチ子持ちなのよ」 「え!そうなんですか?」 えー、見えない!子供いたの!? 「その元旦那っていうのがね、男の恋人を作って出て行ったのよ。だから私は可愛い娘を悲しませたゲイって人種が大っ嫌いになったっていうわけ」 あー…それは…ものっすごい地雷…… 「佑成もそれを知っていたから今まであなたたちのこと黙っていたのね」 「そういうことだったんですか」 お母さんがスッと手を出してきた。 「仲直りしてくれる?いきなり嫌なこと言っちゃったけど…仕切り直し。よろしくね」 俺はもちろん握手した。 「とんでもないです。こちらこそよろしくお願いします」 「あなた佑成の扱いがとっても上手ね。あの子が今までの彼女にあんなおつかいさせられてるところなんて考えられないわ」 「き、恐縮です…」 さすがにお母さんの前でいきなり醤油と牛乳買いに行かせるのヤバかったよな… 「気に入ったわ。よく見ると可愛い顔してるし。今度遊びに連れて行ってあげるわ」 「え、あ、はい」 どこに連れて行かれるんだ…? 「ところでさっきからいい匂いがしてるのよね。なんの匂いか聞いてもいい?お行儀悪いけど」 「あ、えーっと、筑前煮の匂いですかね多分」 「まあ!筑前煮?あなたが作ったの?」 「はい。家庭料理くらいしか出来ませんが…」 お母さんは目を輝かせた。 「私和食って大好きなの!食べていっても構わない?」 「勿論です。お母さんに召し上がって頂くために作りましたから」 俺が笑顔で言うとお母さんも微笑んでくれた。 「あなた最高だわ。お嫁に欲しいくらい!うちの衣織は料理があんまりだから…」 「お口に合うかわかりませんが、そろそろお昼ですし今すぐご用意しますね」 俺がキッチンに立って少ししたら買い物から篠田が帰ってきた。 俺とお母さんがいきなり打ち解けていたので驚いていた。 俺の用意した筑前煮も茶碗蒸しもお母さんは絶賛してくれた。 衣織さんと味覚がたぶん似てるんだな。俺の料理、そんな褒められるようなものじゃないと思うけどとにかく口に合うようで良かった。 「佑成。あなたの選んだお嫁さんは完璧だわ」 「だろ?」 篠田は得意げだ。 そしてお母さんは真顔で聞いてきた。 「で、式はいつ挙げるの?」 「しっ式!?ゲホ、ゲホ」 俺はびっくりして喉を詰まらせた。 隣の篠田が背中を叩いてくれる。 「そうよ。善は急げって言うじゃない?今年中は無理?来年になっちゃうかしら」 「待てよ母さん、いくらなんでも式はちょっと…」 「そ、そうですよ。男同士でなんて…必要ないですから」 「えー、そう?今時男同士でやる人はやるんじゃないの?」 そうかもしれないけど! そもそも俺の身内ですら男と付き合ってるの知らないんだから。 「パーっとやっちゃえばいいのに。パーっと!」 認められた途端すごい乗り気になっちゃったな篠田ママ。 「母さん。とにかくそういうのは俺たちが決めることだから。そっとしておいてよ」 「まー、冷たいこと。こんな可愛いお嫁さんもずっと隠してるし。佑成ったら困った子よねぇ、一樹ちゃん?」 「あ、はい」 いつのまにか俺は一樹ちゃんと呼ばれていた。 「ちょっと面倒なところもあるけど優しい子だから見捨てないであげてね。もし悪さしたら私に言ってちょうだい。お灸を据えにくるわ」 「また古臭い日本語を使う…」 篠田は呆れていた。

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