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第1話*
品のいい音楽がラジオから流れている。クラシックのバイオリンが耳に心地よい。ゆったりとした曲調は、一週間の仕事を終えた金曜日の夜にピッタリだ。休日に入る前の静かな時間。この番組はそれを提供してくれる。
『皆さん、こんばんは。パーソナリティーの高島柚希 です。今夜も『きみにVOICEを』の時間がやって参りました……』
男性とも女性とも言えない、中性的な声が聞こえてきた。メリハリはあるけれど少しハスキーという、「魅惑のニューハーフボイス」である。
『それでは早速、お便りを紹介しましょう。東京都在住の『とみー』さんから……』
あっ……と思った時、正面のパソコンデスクで作業中の青年・叶十夢 が小さく微笑んだ。
「おや、また読まれてる。ありがとう、柚希くん。二週連続で読んでくれて」
「い、いえ……」
「でも、あまり同じ人ばかり読み上げてると他のリスナーに嫉妬されちゃうかも。今度からは一ヶ月に一回程度でいいよ」
「は、い……」
なんとか返事をしたけれど、正直それどころではなかった。
柚希は白いワイシャツ一枚羽織った状態で、部屋のロングソファーに寝転がっていた。下着は身につけておらず、シャツの裾から白い太ももが見えている。丈がギリギリのところまでしかないため、一生懸命裾を引っ張っても、大事な部分が見えてしまいそうだった。
「うっ……」
十夢先生がリモコンのスイッチを切り替えたのか、腹の中に埋め込まれているローターの振動が不規則に変化した。予測のつかない変則的なリズムで肉襞を刺激されて、思わず鼻にかかった吐息を漏らした。額から官能的な汗が滲み、甘い痺れが腰から這い上がって来る。全身の血液が徐々に熱く滾ってくる。
助けを求めるように、柚希は十夢に視線を送った。
「先生……まだですか……?」
「うん……あとちょっと。ここの描写、もう少しリアルに表現したいんだ」
「はう……」
そう言われてしまったら、柚希としては我慢するしかない。
叶十夢は売れっ子のBL作家である。その中には当然官能的なシーンがあり、特にBL小説においては一番の見どころだった。作家としては決して妥協できないシーンだった。
「あ、柚希くん。ちょっとこっちに身体向けて、脚を開いた状態で座ってくれるかな」
「えっ……!?」
「主人公がそういうポーズを取っているシーンなんだけど、そこのエロさがどうも足りなくて。ちょっとモデルになって欲しい」
「…………」
心の中では逡巡したものの、敬愛する十夢先生のお願いじゃ断れない。
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