今日の疾風(はやて)は、かなりご機嫌のようだ。 　鼻歌まで歌いながら学校に向かっている位なのだから。 　学ランに身を包み、電車に乗る疾風。 　だが疾風は見た目が可愛いからなのか、たまに痴漢に合う。 　せっかく今日はご機嫌で来たのに疾風はその可愛い顔を一変させ、その痴漢の手を取ると手首を捻り、 「この人、僕に痴漢しました！」 　と高々とその手首を車内で掲げるのだ。 　そういうことに関しては疾風にとっては恥ずかしい気持ちは無いのかもしれない。　寧ろ犯人を捕まえるという正義感の方が優っているからであろう。 　その痴漢は次の駅で降ろされて駅員に引き渡すと、疾風はいつものように事情を聞かれてから学校へと向かう。 　当然、そんなことがあったのだから学校には遅刻する。　そんなの日常茶飯事な疾風。　そこで駅員に貰った遅延届けを学校へと提出させると、当然学校側も遅刻には出来ず授業へと参加する疾風。 　そう疾風は一カ月に一回程度は痴漢に合っていた。　もう毎度のことで慣れたもんだ。 　高校二年生で背もそんなに高くはない。　155cm位だ。　おまけに顔も可愛いからなのか、本当に痴漢に逢いやすい。　学ランを着ていて完全に見た目は男なのに何故か狙われる。　何故、狙われてしまうのかは、謎なのだが。　そういった趣味の人には狙いやすいという事なのであろう。 　疾風は小さい頃から空手をやっていた。　そして疾風には兄貴がいて、その兄貴の影響で始めたのもあるのだが、小さい頃から疾風は可愛い顔をしていたからであろうか何度か誘拐されそうになって自分の身を守るために始めたというのがきっかけでだ。 　学校の教室に入り椅子に座ると溜め息を漏らす疾風。