せっかくの朝の気分が、今の痴漢で台無しだ。　疾風はそこで溜め息を吐く。 　それからは何事もなかったかのように授業に出るのだった。 　今日の疾風は朝から何故機嫌が良かったのか。 　そう今日は疾風が大好きなお兄ちゃんである翼(つばさ)に会えるだからだ。 　翼は疾風からして五個も上のお兄ちゃんで今年からは社会人として一人暮らしをしている。 　今日は週末である金曜日で、今日はその翼が住んでいるマンションにお泊りに行く日でもある。 　翼は疾風と違って何でも出来るお兄ちゃんだ。 　小さい頃、遊ぶ時も一緒で例え疾風がわがままを言っても優しく対応してくれて、そして一緒に通っていた空手道場でも強い部類に入っていて大会に出場すれば優勝や準優勝は当たり前な位に強かった。　見た目もカッコよく誰からも好かれるタイプで弟である疾風は何気に嫉妬していた記憶がある。　身長もそこそこに疾風とは違い175cmとまずまずな身長だろう。　勉強もそこそこ出来るタイプでもあったのだから。　流石に有名校までの能力はなかったようなのだが、出来る方ではあった。　それでよく疾風は翼に勉強を教えてもらえていた。 　そんな翼に最初は憧れていたのだが、いつの頃からかそれが好きという感情に変わっていた。 　だからさり気なく翼に告白をして、それで翼も疾風のことが好きだということが分かって、今では付き合っている。 　そして毎週金曜日の夜になると疾風は翼の家に遊びに行くことになっていた。 　実の兄の家だからなのか、とくに心配する事なく、寧ろ、安心した様子で送り出してくれる。　そう「いってらっしゃい！」と笑顔で見送ってくれるくらいなのだから。 　流石に親だって兄弟で付き合っているとは思う訳もないだろう。　勿論、疾風は親には、翼と付き合っているとは言っている訳はない。