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恋に臆病ななふたりが30年間育んだ真実の愛

きりりとした眉がぴくぴくと動き、やがて黒い瞳が伊澤を捉えた。 「悪いな、いつの間にか眠ってしまったみたいだ」 根岸が動こうとしたら、奏音が腕に、亜優が背中にしがみついた。 「奏音もまだしも、亜優はひとりで寝れるだろう」 困ったなとぼやきながらも嬉しそうににこっと微笑み、奏音の頭を優しく撫でた。 「俺も昔、亜優みたく伊澤の背中にしがみついて、ガキみたく駄々を捏ねて、困らせていたっけな」 「なんだ、忘れていると思ったぞ」 「忘れるわけないだろう。俺なりの愛情表現だったんだ。好きな子にわざと悪戯して、駄々を捏ねれば、構ってもらえるの分かっていたから。笑うなら笑え」 「笑わねぇよ」 伊澤が隣にもう一組布団を敷き、横になった。 「お前の気持ちは分かっていた。だから、素直に甘えてくるお前が可愛くて、つい、塩対応になる。あんときは悪かったな」 「なんのことだ?」 「日本を離れる朝、お前なんて大っ嫌いだ。もう二度と連絡してくるなって電話したことだよ。 眠いから寝る。おやすみ」 恥ずかしくて伊澤は布団を頭から被った。 「俺と悠仁がやり直すために距離を取ろうとしてくれたんだろう。分かってるよ、そんなことくらい」 伊澤に話し掛けながら奏音と亜優を起こさないよう手をどかし、そぉーと布団から抜け出す根岸。ついでに服を全部脱ぎ捨て、伊澤が横になっている布団に潜り込んだ。 「おぃ、待て!てか、なんで裸なんだ!」 「ふたりが起きっちまうから、静かにしろ。チューすっぞ」 布団の中でいちゃつくふたり。 眠りの浅い奏音がすぐ目を覚ましぐずりはじめた。 「ネンネ」 亜優が背中を撫でてあやしてくれた。 ネギとイザの邪魔をしないようにしてあげよう。リモコンに手を伸ばし照明を消した。

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