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第1話

「朔斗、そろそろ結婚しよっか。まあ、養子縁組なんだけど」 直樹にプロポーズされたのは唐突だった。 ムードも何もない。 まあ、男同士ならこんなもんかとも思う。 俺は涙が出るんじゃないかってほど嬉しかった。告白したのは自分から、同棲を誘ったのも自分から。 俺は、ただ自分に合わせてくれているだけなんじゃないかって思ってたから。その不安は結婚しようと言ってくれた今でも俺を蝕む。 「…無理……だ…」 「……なんで?」 断りの言葉を口にしてしまう。 ずっと知ってたんだ。直樹が何回も何人もと浮気を繰り返していること。でも、子供も産めない男の俺と付き合ってくれていることが奇跡なんだって思って、浮気をやめてなんて言ったらきっと重いと言われると思って、直樹に言えなかった。 もし、俺が「はい」って言っても浮気を続けるのだろうか。付き合っている今よりも、尚強い関係になっても浮気を続けるのだろうか。 きっと俺は耐えられない。今の関係でさえ、二人でホテルに入るところを見たり、仕事だと遅く帰ってきた日のシャツについている甘い香りと薄いキスマークを見ると泣きたくなるのに。きっと、壊れてしまう。

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