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第110話 恋夜 1 ※

   体を震わせると、宥めるように軽くヴァンテルが口づけてきた。  指先は後孔を探り、入り口に優しく触れる。 「んッ⋯⋯ぁ⋯⋯」  香油をまとった指で円を描くように丁寧に撫でられ、奥がわずかに疼く。 「⋯⋯そんな⋯⋯とこ」 「アルベルト様、力を抜いて⋯⋯」  つぷ、と指先が入ってくる。 「ひ! あッ!」  異物の入る感覚は、今まで味わったことのないものだ。そのまま指が中に押し入り少しずつ進む感覚に、体が強張ってしまう。  空いた手で優しく頬を撫でられ、安心させるように何度も口づけられる。  探るように曲げられた指先が一点に触れた時、体を貫くような痺れが走った。 「ンッ!  ⋯⋯ぁんっ」  自分の口から、聞いたこともないような甘い声が漏れて腰が浮く。  異物感など瞬時にわからなくなるような凄まじい刺激だった。 「⋯⋯ここですか?」 「やっ! さわ⋯⋯らないで⋯⋯」  はあはあと息がこぼれ、背中が反りあがる。  気が付けば首から鎖骨へとヴァンテルの舌が這い、しゃぶるように愛撫を繰り返している。 「クリス⋯⋯んッ! クリス!」 「全部、塗り替えます」  何を、と聞こうとしたのに。  長く美しい指が後孔の同じところをこすると、途端にそれどころではなくなった。  狭い場所が少しずつ開き、ぐちゅぐちゅと水音が聞こえる。時間をかけて指が増やされ、想像もしなかった快感ばかりが波のように押し寄せた。 「⋯⋯あっ⋯⋯あぁ⋯⋯ん!」 「可愛い⋯⋯アルベルト様。⋯⋯もう、ここは三本も飲み込んでる」  ヴァンテルは、もっと声を出して、と囁きながら耳たぶを()んでいる。うなだれていた芯は、肉襞をかき回されているうちに起ち上がりはじめた。 「⋯⋯やっ、やだ。もう⋯⋯」  ──奥がおかしい。  ⋯⋯熱くなって、疼いて。こすられるたびに、自分のものじゃないような甘い声が出る。いつのまにか、話し方も子どもの頃に戻ったようになっている。 「貴方自身が蜜のようだ。とろけるように甘くて⋯⋯引き寄せられるまま、口にしたくてたまらなくなる」  耳孔に舌を差し込まれ舐められながら、ヴァンテルの指が内壁をさらに拡げるように、ばらばらに動く。  口の端から零れる唾液を男の舌が舐め、硬く尖っている乳首を空いた手の指で捏ねる。どこに触れられても感じてしまって、どうすることもできない。 「クリス⋯⋯クリス、おか⋯⋯しい」 「⋯⋯何がです?」  体の中から、狂おしいほどの渇望が湧き上がる。 「あ⋯⋯あ! そこ! ンッ、もっと⋯⋯」  自分が口にした言葉がわかった途端に、あまりの羞恥に唇を噛んだ。  ──もっと、なんて。  

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