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第111話 恋夜 2 ※

 後孔から指が抜かれて、ヴァンテルが体を起こす。自分の中に入っていたものがなくなって下半身の力が抜け、安堵と共に寂しいような気持ちがよぎる。  快感に揺さぶられて反り続けた腰に枕が添えられ、体が楽になった。 「⋯⋯アルベルト様、愛しています。貴方の全てが欲しくてたまらない」 「クリス⋯⋯」  青く美しい瞳の底に、とろりと煮詰めたような欲望の色が見える。膝裏が持ち上げられ、入り口に潤みを帯びた雄が、ぴたりと当てられた。どくどくと熱く波打つ塊に思わず腰をよじる。  ヴァンテルが服を脱ぎ捨てた時、下半身を見て同じ人間が持つものなのかと衝撃を受けた。あの大きさを、とても自分が受け入れられるとは思えない。 「で、でも、クリス。そんなの、入らな⋯⋯」  最後まで言うのを待たずに唇を塞がれ、舌を深く吸われた。  逃げようとする腰を捕らえられて、ぐっと引き寄せられる。ヴァンテルの両手の指が腰骨を掴み、離れるのを少しも許してくれない。  入り口を押し開き、ずず⋯⋯っと、熱の塊のような雄が中に挿入(はい)ってくる。 「あ⋯⋯! ああぁっ⋯⋯」 「くッ⋯⋯!」 「クリ⋯⋯んっ! んぁッ!」  散々拡げられた肉壁は、ぐちゅりと押し入ってきたものを少しずつ呑み込む。  自分の中が潤んでいるように、(たぎ)る雄からは雫が滴っている。互いの体から溢れた粘液が、信じられない大きさのものを受け入れるのを助けていた。 「⋯⋯アルベルト⋯⋯様」 「⋯⋯ぁ⋯⋯あッ⋯⋯」  硬く昂る雄が奥まで進み、声を出すことさえ出来ない。浅く息を繰り返すと、腰の動きが止まる。 「⋯⋯少し、この⋯⋯ままで」  ヴァンテルはそう言いながら額に汗を浮かべ、眉根を寄せる。  美しい男が体を屈めて口づけしようとした時だった。角度が変わった瞬間、肉襞がいっぱいに拡がり、全身が反りあがる。 「──ッ!!」 「あっ! だめ!! まって!」  雄がすり上げた部分に、足先まで痺れるようなびりびりとした快感が突き抜ける。肉襞がきゅっとしまり、中のものを締め上げた。  ぶるり、と震えた雄がいきなり律動を開始する。 「クリス! あっ、やだぁ!!」 「⋯⋯お許しをっ」  叫ぶような声と共に、体が揺さぶられ、挿入が繰り返される。次第に苦しさよりも快感が増していく。大きなうねりが何度も訪れ、肌にヴァンテルの汗が散った。  引き抜かれては一気に貫かれ、目尻には涙が浮かぶ。 「あぁんッ!」  ひっきりなしに喘ぐ声も、雄を打ちつけられて悦ぶ体も、まるで自分ではないようだった。 「んッ! んぁ⋯⋯あッ」  どうにかなってしまいそうで、腕を伸ばせばしっかりと指と指が絡められた。  後孔の入り口にこれ以上ないほど雄の根元が押し込まれ、肉襞がきゅうきゅうと縋りつく。 「⋯⋯ッ⋯⋯は⋯⋯」  一際大きくなった雄が奥を強く突いた。  目の前が白くなり、芯からヴァンテルと自分の体にわずかな白濁が飛ぶ。  体を折りたたまれるようにして更に奥まで突かれ、熱い(ほとばし)りが中に注がれた。あまりに熱いそれを受けて、自分の体がびくびくと震える。  ──子種を注がれることが、こんなに熱いだなんて⋯⋯。  体が全てを悦んで受け取っているようで、背筋に甘い痺れが走っていく。  深くつながったまま、強く強く抱きしめられた。 「アル⋯⋯。アルベルトさま⋯⋯」  汗ばんだ体から熱い息が漏れる。私の中いっぱいに満ちた雄は、再び力を取り戻していく。 「愛しています。⋯⋯この先、何があっても」  途切れ途切れに聞こえた声に、私は何とか頷いて返したと思う。  声になったのかどうかわからないが、自分の意識が消える前に呟いた。 「⋯⋯ん⋯⋯クリス⋯⋯愛してる」  

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