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第15話 【最終話】美少年VTuberは引退してイケボ男子に好かれたい♡
「じゃあ、良いもの見させてもらったわ。ありがとな」
「こっちこそ色々協力してくれてありがとう。お陰で助かった」
進藤は着替えを済ませると満足そうに帰っていった。
後には僕と瀬川が残された。
「えっと…俺も帰ったほうがいいよな」
荷物を持って瀬川が帰ろうとする。
僕は思わず手を掴んで引き止めた。
「待って!」
瀬川が僕を振り返る。
あ…どうしよう。
でもこのまま帰ってほしくない。
「皐月?」
これで瀬川が帰ったら…カミヤさんとのゴタゴタは解决しちゃったし、僕たちまたただの同級生に戻るよね。
せっかく仲良くなったのに――というのかわかんないけど――僕はたぶん瀬川のことが好き。
瀬川は僕じゃなくてアイのファンだけど、嫌われてはいないよね?あんなことしてくれるくらいだし…
「帰らないで」
「え…?」
どうしよう。瀬川を帰さない理由…瀬川を帰さない理由…何かないかな…
そうだ。僕今アイのコスプレしてるんだ。
「あ!あの…これ…アイの衣装…」
「え?ああ、良く出来てるよね」
よし…ダメ元で言っちゃおう。
「瀬川、僕のこと抱いてくれない?」
「はぁ!?!」
引いてる…、恥ずかしい。でも僕は引かない。
瀬川と最後に一回だけでもえっちしたい。
「た、助けてもらったからお礼に…。アイの衣装のままでいいから…アイだと思っていいから僕とえっちしてみない?」
他の誰のこと誘うときも、こんなに震えたことはなかった。
さっきカミヤさんにしたみたいにスカートの端を少し持ち上げてみるけど、断られるのが怖くて足がすくんでいた。
瀬川は驚いて目を瞬いている。
ドキドキして死にそう。お願い良いって言って。
「ダメだよ。それはできないよ」
瀬川が、僕の持ち上げたスカートの裾を直して露出した足を隠した。
「あ…」
断られた…
ショックで頭が真っ白になった。
アイの衣装でもだめなんだ。
そりゃ……男とセックスなんて気持ち悪いよね。
「ごめん、変なこと言っちゃった。嫌だよね…。気にしないで!じゃあ僕着替えるから。ありがとうね。また明日!」
早口で捲し立てて背中を向けた。
せっかく親切で助けてくれたのに変なこと言っちゃった。僕って馬鹿だ。
あー最悪、涙出てきたし。
もう、馬鹿馬鹿馬鹿…
「皐月…」
瀬川が肩を掴んで僕の顔を覗き込んで来た。
僕は手で顔を隠す。
「ごめんね…かっこ悪いから見ないで。振られて泣くとかダサすぎ!あはは」
涙がぼたぼたと床に落ちた。
「振られてってどういう意味だよ?」
「………」
僕は答えられなかった。
本当にこれ以上惨めになりたくないから帰ってくれないかなぁ。
「俺は皐月のことが好きだからアイのことは抱けない」
「え?」
僕は耳を疑った。
顔を見上げる。
「俺はお前のこと、ただの性欲の捌け口として見てるわけじゃない。他の、お前のこと抱いてきた男とは違うつもりだから」
「瀬川…」
瀬川が僕のことを好き?
アイのことじゃなくて?
両方の肩を大きな手で掴まれた。
「お前が俺のこと好きになるまで、俺はお前とセックスしない」
え…?それなら話は早いじゃん。
「僕は…瀬川のこと好きなんだけど…」
「いや、嘘だね。お前は単に俺の声が好みで手軽に気持ち良くなれるから俺と寝たいんだ」
はぁ!?
「ち、違うよ!瀬川のこと好きだよ。瀬川とだったらセックスしなくても一緒にいるだけで気持ちいいもん!」
「ふーん、じゃあやっぱりしなくて良いな」
「え、あ…それは…えぇ?」
しないんだ。
え、したくないの?
「瀬川はじゃあ僕とえっちしたくないの?」
目を見つめる。いつも冷静そうに見えるけど、本当はそんなことないって知ってる。
今も、だんだん目の縁が赤くなってきてる。
「それはしたい…けど」
瞳も揺れてる。瀬川も僕とえっちしたいんじゃん。
「じゃあしようよ」
肩に置かれた手に、自分の手を重ねた。
肩に伝わる手の感触が僕を安心させてくれる。瀬川は僕のことが好きなんだ…
嬉しくてどうにかなりそう。
「キスして…」
僕は目を瞑って瀬川からしてくれるのを待つ。瀬川は少し迷ってるようだ。
「キスだけなら良いでしょ?」
焦らさないでよ…。顔が近づいてくる気配がするのに触ってこない。
僕はつい目を開けた。鼻先が触れそうな位置に瀬川の整った顔が見えた。
「瀬川のこと…好き」
なんとなく言っただけだけど、それを聞いた瀬川が僕の唇に喰らい付いてきた。
もう我慢できないって感じで。
「んっあふっ…ん…」
チュッ…ピチャ…チュク…
ああ、なんだよこんなエロいキスする気あるくせに…焦らすなんて。
瀬川の手は肩から離れて腰と背中を撫でている。
僕も両腕を瀬川の首に巻きつける。
キスするの気持ちいい…
さっきカミヤさんに押し倒されたソファに瀬川を座らせ、僕はその上に乗っかる。
瀬川は僕の着てる衣装を脱がせた。
ウィッグも床に落ちる。
スカートのファスナーを外して、僕は自分で脱ぐ。
「おい、お前下着まで…?!」
カミヤさんは下着も女性物を用意していたのだ。
白いレースのショーツがガーターベルトでニーハイストッキングと繋がっている。
「エロ…いや馬鹿かよあの社長…」
瀬川が動揺してるのがおかしくて、僕はお尻を突き出して見せる。
「どう?エロい?」
「馬鹿!やめろ!」
慌てて瀬川は俺の手を引っ張ってソファに押し倒した。
「そういうことしなくていいから」
なんだよ…顔赤くしてるくせに。
「なんで?えっちな僕を見たら変な気分になるから…?」
脚を開いて瀬川の腰を両足で挟む。
「だから、やめろって。なんで普通に出来ないかな…」
「僕オタクだから変なアニメの見過ぎなのかも?」
「皐月!何見てるんだよお前!?」
「あはは、嘘だよ」
そしてまたキスをした。
瀬川は裸の僕の胸に吸い付き、乳首を舐めながらガーターベルトを器用に外していく。
「あっ…ん…瀬川ぁ」
「ん?」
「そういうの…外すの慣れてるんだ?」
また赤くなった。瀬川もえっちじゃん。
「前の彼女がこういうの好きだっただけだよ!」
へー。なんか面白くない。
瀬川の服も剥ぎ取ってやる。
細身だけどちゃんと筋肉が付いてて、脱ぐと意外と胸板は厚め。
「皐月…」
「ああっ」
耳元で急に名前を呼ばれてビクッとした。
これこれ、これがたまらない♡
「下の名前がいい…」
「夕兎…」
名前を呼ばれてショーツを脱がされ直にペニスを握られた。
「ああ……あっ」
柔らかく性器を扱かれながら、耳元で名前を呼ばれる。
この瞬間が一番好き…
「瀬川ぁ…好き、瀬川のこと好き」
気持ちいいよぉ…♡
「夕兎、もう他の奴とはこんなことしないで。俺が何でもしてあげるから」
耳元でいい声で言われる。
「しないっ!もう誰とも…瀬川としかえっちしない…あんっ」
「良かった」
ほっとした顔をしてる。
「瀬川、もうお尻も気持ちよくなりたい…」
配信部屋でヘッドホンをしながらオナニーすることが多いから、ローションもすぐそこの引出しに入れてあった。
「皐月、こんなのこの部屋に置いてるの?ここで何してるの?」
意地悪い顔で言いながら瀬川がローションをつけた指で僕のお尻の穴を探る。
「いやっ…聞かないで…ああっ指…ん…」
ぬちゅ…ぬく、ぬく…
ああっ瀬川の指入ってるぅ…
自分でお尻に指を入れるより、長くて節くれ立ってて気持ちいい。
「すごいな。ここ入り口狭いのに中は柔らかいんだ」
「あっ!あん!そこっダメェ」
「あれ?ここ気持ちいい所?」
「ひっああっ!やだ、そこばっかりやっあっダメ、出ちゃうから!」
僕の性器は硬く張り詰め、先走りの液で濡れていた。
「えっちな汁が先っぽから出てトロトロだね…」
ピン、とペニスの先を弾かれる。
「ヒィッ!やめて、やめてぇ」
身体がピクンと跳ねる。
「一回イっていいよ、夕兎」
耳元で低く囁かれて腰からゾクゾクと快感が這い上がった。
同時に前立腺とペニスの先を責められて僕は射精した。
「あんっイク!ああっ♡」
ビクビクっと震えている僕に瀬川はキスしてくる。
気持ちいい…
「瀬川ぁ…もう我慢できない…瀬川の挿れて…」
僕が息を荒げたまま言うと瀬川はしばし僕の顔を見つめて、制服のスラックスを下ろした。
いつも優しい瀬川の目に、欲情した雄っぽい光が差している。
「挿れるよ」
「ん、きて…」
瀬川のペニスが僕の窄まりを押し開き、ず…と中に入ってきた。
僕はギュッと背中にしがみついた。
「あ…瀬川…」
僕、初めて好きな人とセックスしてるんだ。やばいこれ…中に入れてもらっただけでもう気持ちいい…
「夕兎、動いても大丈夫?」
「うん、好きに動いて…」
瀬川は優しく僕の身体を包み込んで、負担がないよう気遣いながら出し入れを繰り返した。
こんな丁寧に抱かれたこと無い。
ガンガンに突かれるのが良いって思ってたけど、ゆるい感じで一緒に揺れるの気持ちいい…
頭ふわふわする…
「夕兎…気持ちいい?可愛い…」
「気持ちいい…気持ちいい…キスして瀬川」
キスしてくれる。本当に何でもしてくれる…優しい。多分、強くしてって言ったらしてくれる。
でも今日はこうやってただ、ゆっくり揺すられて抱き合ってるのが良い。
……とか言いながら最後は2人とも汗だくで腰を振ってました。へへ♡
僕と瀬川はソファの上に寝そべっていた。
「瀬川…僕もう、兎月アイは辞める。VTuberもやめる」
「ほんと?なんで?」
「瀬川が僕のこと好きなら、もうバーチャルの世界はどうでもいいし…今回の件で懲りたよ」
これまでネットを介して会った相手には、抱かれてても性的に搾取されてるって感じだった。だけど瀬川にはひたすら大事にされてるって思える。
「僕には向いてないみたい」
瀬川が僕の髪の毛を撫でた。
「賛成」
僕たちはなんだかおかしくなって2人で笑った。
〈完〉
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最後までお読みいただきありがとうございました。
個人的にVTuberもののBLで、可愛いだけじゃなくて裏に欲望も渦巻いてるよ的な話が見たいなと思って自分なりに書いてみました。
仮面を被って虚構の世界で演じる夕兎がリアルでの恋愛や性欲とどう折り合いをつけるか…というのを考えていたらこんな話になり、結局ラブラブで終わりました。
本作で助っ人参加してくれた進藤と一緒に夏休み海に行く話が『バイト先のイケメン男子高校生に乳首イキさせられる恥ずかしい大学生』の番外編になります。
少しだけ夕兎が出てきますのでご興味がありましたら是非読んでみて下さい。
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