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第14話 イケメンストーカー社長に脅迫返し

玄関のドアを開けるとカミヤさんが立っていた。 「いらっしゃい。早かったんだね」 「ああ、待ちきれなくて。車はどうしたらいい?」 キーを手で弄びながら聞いてくる。 「あ、待ってね。今ガレージのシャッター開けるから」 車を停めさせて、カミヤさんを中に招き入れる。 瀬川と進藤の靴や荷物はきちんと隠してある。 「うれしいな、家に招いてくれるなんて。俺のこともう怒ってない?」 カミヤさんは上機嫌だった。 「え?…うん、怒ってないよ。」 嘘。めちゃくちゃ怒ってる。 「そうか。よかった。この前ビデオ通話したとき様子が変だったろ?心配したよ」 「あ…えっと…ちょっと寝不足で機嫌悪かったから…」 「可愛いな」 するっと腰に手を回される。 ぞわっとする。悪い意味で。 更に耳の後ろに鼻先を突っ込まれる。 「いい匂い…早く食べたいよ」 あああ、もう!早く消えて欲しい! 「あ、あの。配信部屋こっちだから」 首を捻って顔を離し、部屋を案内する。 中に入るとカミヤさんは興味深そうにジロジロあちこちを見始めた。 「へぇ!これが兎月アイの部屋かぁ~」 あんまり見ないでよ…カメラがバレませんように。 「どうしたの?何だかそわそわしてるね。緊張してる?」 「う、うん…だってまた顔出しするんでしょ…」 「そうだよ。なるべく多くの人に可愛いアイの姿を見てもらわないとね?」 カミヤさんはニコニコしていた。 このまま断ったらこの表情は激変するのだろう。 「衣装持ってきた?」 勿論、と言ってカミヤさんは手にした荷物を僕の目の前に差し出した。 僕はまた、兎月アイの衣装に身を包んだ。 メイク道具も持って来ていたので、軽く化粧もする。といってもチークを付けてリップを塗ったくらいだけど。 「ああ、アイ…なんて綺麗なんだ…。これが俺のものだなんてゾクゾクするね。早くこの美しさをみんなに見せたいよ」 カミヤさんはウィッグの長い髪の毛を一束すくって口付ける。 変なおじさん…。 よし、そろそろ迫って押し倒してもらわないと。 カメラ的に、あの辺のソファが良いよね。 「カミヤさん…僕、この格好したらなんかムラムラして来ちゃった」 そしてここで必殺上目遣い。 からの、抱きつき。 「ええ?もう少し我慢だよ。配信が終わったらたっぷり可愛がってあげるから」 配信が終わって? それじゃぁ遅いんだってば。 「ダメダメ、もう待てないっ」 股間をカミヤさんの太ももにグリッと擦り付ける。 「おいおい…どうしたんだ?発情した猫みたいに…」 そんなこと言いながらゴクリと喉を鳴らしてる大人は誰だよ? 僕は後一押しだと思って、一旦カミヤさんから離れてスカートの裾を捲り上げ、ガーターベルト付きのニーハイを見せつける。 「ねぇ…僕…アイが悪いお兄さんに襲われちゃうシチュエーションでえっちしたいなぁ…♡だめ?」 カミヤさんは僕の姿を見て目の色を変えた。 「悪いお兄さん?悪い子なのはそっちだろ?我慢のできない…いけない子だ…」 そろそろと近寄って来る。 僕は後退りしながらアングルが良さそうなソファにさりげなく誘導する。 よし、この辺なら良いだろう。 パッと両手で腰を掴まれる。 「さあ悪い子ちゃん、お兄さんがお仕置きしてあげるよ」 「あんっやだ、離して…」 腰を捻って逃げようとするフリ。 「逃げようとしたって無駄だよ。君はもう俺のものだからね」 ドサっとソファに押し倒された。これじゃまだ弱いよね?もう少し決定的な映像が欲しい。 「あっ、何するの?怖い…」 僕はわざとらしく身を捩る。早く服脱がせてよ。 するとカミヤさんの手がスカートの裾から中に入ってきた。 うげ、変態め。 「あ…だめ、どこ触って…あっ!」 ちょっと、服は脱がせずに触るのかよ。 下着の上から性器を擦られる。 気持ち悪くて鳥肌立っちゃうよ。 「んっんむっ」 キスされた。まぁ、これもわかりやすくていいか? 「いやっやめてっ」 首を振って避ける。 「大人しくしろよ」 顎を掴まれ、またキスされる。 よしよし、いいぞ。無理矢理感出てるよね? 「んっんんっ苦しいっ。どけて…重たいってばぁ」 身を捩って下から抜けようとするけど、カミヤさんは僕の身体なんて軽々とまた引き寄せる。 よし、この辺で本気で暴れよ。 2人が入ってくる合図は、僕が「助けて」って叫んだらと決めてる。 「いやっいやっ!触るな!やめろよ」 カミヤさんが掴んでる手を払う。 「アイちゃんだろ?どうしたんだ急に男みたいな言葉で」 半笑いで顔を近づけてくるからその顔を両手で押し返す。 「違うって!気持ち悪いからもうやめて!」 「アイ…?おい、お前からアイでって言って…」 両手首を掴まれた。僕の力だとびくともしない。 この辺が潮時かな。 「ヤダヤダ!離して!ー!!」 僕は合言葉を叫んだ。 「おい、ふざけるのもほどほどにしろよ。ここ、防音だろ?誰にも聞こえな…」 その時ドアが開いて2人が入って来た。顔はキャップと黒いマスクで隠してる。服も制服のままではまずいので全身黒に着替えていた。 「なんだお前たち!?」 びっくりしているカミヤさんを2人がかりで拘束する。 進藤が手首を捻ったら力も入れてないようなのに「イタタタ」とカミヤさんは唸ってしゃがみ込んだ。 とりあえず、僕も手伝ってガムテープでぐるぐる巻きにした。 「ちゃんと撮れてた!?」 「ばっちり映ってる」 2人は別室のモニターで見ていて、音も聞いていたのだ。 「おい、夕兎!?これはどういうつもりだ!」 カミヤさんはご立腹だ。でもこれには僕もカチンときた。 「そっちが脅すようなことしてくるからだよ。自業自得だろ。ハメ撮り動画、削除してよね」 それを言われてムッとしている。 どういう神経? 「全部削除しないとさっきの強姦未遂動画ネットに晒すからね!」 「なっ!あれはお前がしたいって言うから…」 カミヤさんは慌てて反論してくる。 「そんなの見る人にはわからないもん。いいところだけ切り取って流すし」 「くっ…。わかったよ。スマホは胸ポケットだ。削除するからガムテープを取れよ」 そしてカミヤさんに動画を削除させた。 バックアップは取ってないって言ってるけど嘘だね。 気持ち悪いけど、こっちもさっきの動画が人質だから。 「これでもう僕の前に二度と現れないでね」 「誰がお前みたいな性悪これ以上相手にするかよ!お前たちもこの淫売に関わってたらいつか酷い目に遭うぞ!」 しっかり瀬川と進藤にも捨て台詞を吐いて帰っていった。 あー、最後まで腹立つ男! 瀬川が後から心配そうに言う。 「あいつ…変な気起こさないと良いな」 すると進藤が答えた。 「大丈夫。あいつの会社調べたけど、うちの親の会社がスポンサーになってて、契約切るって脅せばすぐ黙るよ」 「え!?そうなの!?じゃあ今日こんなことしなくて良かったんじゃ!?」 「だって、おっさん捕まえるとか面白いじゃん」 くくく、と珍しく笑っている。 ええ……… 僕と瀬川は顔を見合わせた。 進藤って…やっぱりちょっと変わってる??

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