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第1章 契り 14※※

《perspective:結月》 亜矢に伝えたことはすべて本当だった。 俺に向ける純真無垢な瞳や、キスのときに毎回恥じらう様を見ていると、おそらく女性とのそういった経験は多くない、いや、ひょっとすると一度も無いのではないか、と思う。 そんな状態で、相手が男、となると、警戒するのも当然だ。 亜矢が俺を受け入れてくれるまで、いくらでも待とうと思っていた。 だが、先刻(さっき)の亜矢の様子を見て、これは単純なことではないかもしれない、と直感した。 ごめんなさい、と、そう繰り返す亜矢の声は、あまりにも弱く、小さかった。何を謝っているのか、何故、こんなにも自分を責めているのか。解らない何かに、怯えているようにしか見えなかった。 そういえば、思い当たる節がいくつもある。 亜矢の笑顔が、時々作り笑いの様に見えるのは気のせいだろうか。 最近俺から距離を置いてると、そう思うのは勘違いか? 触れるたびに、訴えるような眼差しを向けていると、そう思うのはただの考えすぎだろうか? 昨夜は結局、そのことのせいで、あまりよく眠れなかった。 朝食時、ダイニングテーブルの向かいに座る亜矢の様子を、俺はじっと観察した。 視線に気づいた亜矢は、「どうしたんですか?」と訊いたあとで、やや眉をひそめた。 「あっ、このかぼちゃのポタージュ、お口に合いませんでしたか?」 「いや、美味しいよ。いつもありがとう」 「ふふ、良かった」 頬を緩ませこちらを見る瞳も、穏やかな声も、いつもと変わらない。そのことに少しだけ安堵する。 「亜矢、今日学校早めに終わるんだろ? どこか行こうか」 「え!ほんと?」 「ああ。最近仕事ばかりで、どこにも連れて行けなかったしな。行きたいところ、考えておいて」 ぱっと花が咲いたように「嬉しい」と笑う亜矢を見てつられて笑みが溢れる。 ――この笑顔を、亜矢を、ずっと大切にしたい。    * * * 《perspective:亜矢》 今朝、突然の嬉しい提案に心が躍った。 結月さんと出掛けるなんていつ振りだろう。 これから待っている楽しい時間を思うと授業なんかほとんど耳に入らず、終わったら真っ先に家に帰ろうと、ずっと気持ちが急いていた。 それなのに。 教室を出ようとした瞬間、僕は三人の男達に囲まれてしまった。 「おい、宮白。最近やけに帰るのが早いじゃねえか」 「彼氏ができたってか?」 しまった……。 いつもは上手く逃げ切れていたのに、今日に限って捕まってしまうなんて。 無視しようと足を進めると、二人にギリッと両腕を掴まれる。僕は牽制するように、その男達の顔を思い切り睨んだ。 「どうなんだよ?宮白。彼氏に思う存分可愛がってもらってんだろ?」 「ほんと、亜矢ちゃんはひどいよなあ。彼氏ができたら俺たちのことは用済みですか」 ニヤニヤと薄気味悪い表情を浮かべ、男が乱暴に僕の顔を引き寄せた。 「なあ、久しぶりに抱かせろよ……」 耳朶を舐められ囁かれた瞬間、ゾワリと悪寒が全身を走る。 「っ……嫌だっ!!」 僕は最大限の力を込めて、その男を突き飛ばした。 「へえ……反抗するんだぁ。無駄だって、分かってるくせに」 顔を近づけた男の目が鋭く光る。目を合わせたまま、低く唸った。 「――連れて行くぞ」 グッと肩を掴まれたかと思うと、地上から足が離れた。半ば抱きかかえる状態で、強引に外に連れ出される。 「っ降ろしてっ!!」 「そんなに暴れるなよ。痛い目見るぜ?」 「放してっ!放して……」 いくら手足を動かしても、いくら頼んでみても、そんなものは全くの無意味だった。 ガチャンと、聞き慣れた金属の音がする。扉は、閉じられてしまった。    * * * 「っや……めてっ!!」 悲痛の叫びは無視された。 乱暴に制服を脱がされ、一糸纏わぬ状態になった僕は寒さと恥辱に耐えていた。 目の前には、貪欲に満ちた男達。完全なる獣の目を、僕の全身に注いだ。 「相変わらず綺麗な体してんな」 「こんなにも真っ白だと汚したくなるわ」 「っやだっ!放して!」 男に腕を掴まれ、無理矢理足を開かされる。 「……前みたいに、一緒に気持ちよくなろうぜ」 「っやめっ……ぁっ!」 胸の突起を口に含まれ、それと同時に無数の手が伸び、体中を好き勝手に撫で回された。 虫唾が走る。 でも下手に抵抗したら体に傷がつくだろう。結月さんに心配をかけたくない。なんとか、遣り過ごさなければ……。 首筋にピリリと微弱な痛みが走る。 それを感じた瞬間、さっと血の気が引いた。 「つけないでっ……!それだけは、やめてッ!」 嫌だ、嫌だ……。 そんなにつけたら、結月さんに見つかってしまう……!! 「やッ……だぁ!!」 「何が嫌なんだよ。乳首舐められただけでこんなにおっ勃ててんのに」 「っヒッ……!ぅ……」 グリっと先端を攻められ、あまりの衝撃に背中を仰け反った。 「ぅんっ……!あっ……やぁ!駄目っ……!!」 「今日はやけにうるせーな。拒んでんじゃねーよ!」 「ッうぐっ……」 頭を掴まれ、欲を晒した赤黒いモノが口に突っ込まれる。その男がにやりと不気味に嗤って囁いた。 「……ヨくしてよ?亜矢ちゃん」 「ふぅ……ぐ……んッ……ッ!」 妙な違和感で後孔に指が挿入されたのだと気づく。今日はペースが速すぎる。口に含まれたソレで声を出すことも出来ず、男達のされるがままだ。 「うわ、すげえ熱い……。ひくひく締めつけてくる」 「ホント厭らしいのな、お前のココは」 面白がるように卑猥な言葉を吐く。気持ちが悪い。 息が苦しくなって顔を逸らして咽ると、パチンと平手がとんだ。 「ッひ……っあっ……ゴホゴホッ」 「おい、ちゃんとしゃぶれよ」 低く吐き捨てて再び顎を掴まれる。 「ぅぐ……ンんっ……!」 ――体中が熱い。駄目だ。このままじゃ心まで喰われてしまいそう……。 結月さん、結月さんっ……。 ギュッと目を閉じる。 瞼の裏に張りつく、結月さんの優しい顔。そして、彼が言ってくれた言葉を思い出す。 『亜矢を大切にしたい』 こんな思いをするくらいなら結月さんに抱かれていればよかった。 あんなに傷つける必要なんて、なかったかもしれないのに。 僕は、結月さんのことを信じれなかったのだろうか……? ふわりふわりと熱に浮かされる。 「亜矢ちゃん、そろそろ限界なんじゃない?」 「ほら、やりなよ。いつもみたいにオネダリ」 「っあんっ……あぅ……」 熱を持った中央を乱暴に扱かれながら、体のナカで容赦なく動かされる指。 ごめんなさい……。ごめんなさい結月さん……。 いいトコロにあたってくれないもどかしさに、僕は一気に理性を手放した。 ――キモチヨクナリタイ……。 優しく微笑む結月さんの顔が、走馬灯のように脳裏を過ぎった。 僕の大好きな、大好きなその瞳。 「……挿れて。お願いっ……ぁ……やのココ……滅茶苦茶にしてっ……」 男達の目が妖しく光る。ゴクリと生唾を飲む音がやけに大きく聞こえた。 「はっ……。望みどおりに……してやるよっ!」 目からは涙。 解らない、この涙が何なのか。 僕は、穢れているから。 快楽を選んだ僕はやはり、愛される価値も無い……――

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