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第7-1話勇者の礼儀

   ◇ ◇ ◇  翌日、二人は魔王の居城に向かって街を出立した。  地図を広げながら真剣な顔をして歩くグリオスの隣で、エルジュはにこやかな顔をしながら景色を楽しむ。  上機嫌な鼻歌まで聞こえてきて、グリオスのこめかみが引きつった。 「……エルジュ、油断し過ぎだぞ。いくらお前が強いからといっても、相手を侮っていたら足元をすくわれるぞ」 「だって強いし。楽勝だし。どんな攻撃もオレには効かないし」  あまりに稚拙で軽々しいエルジュの発言に、グリオスは大きなため息をつく。  己の人生どころか、世界のすべてを舐めているとしか思えない態度。  しかし、それが過言ではないことはグリオスが一番よく知っていた。  生まれた瞬間から光の加護を授かり、数多の精霊から祝福され、物心ついた頃には剣を手にして村を襲撃する魔物を瞬殺していたエルジュ。  否応なく経験は積み重なり、噂を聞いてあちこちから魔物退治の依頼をされ、旅行気分で遠方に向かっては魔物や魔王を蹴散らし――エルジュがその気になれば、この世界に存在する魔族を殲滅することができる力を持っているのは明白だった。  だからこそ魔物と対峙することを一切恐れず、おぞましく絡まれても心から与えられる快楽を堪能することができる。  そんなエルジュを理解しているからこそ、グリオスは腹立たしかった。

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