49 / 100

第23-1話夢の浸食者

 ――パチンッ。  突然指を鳴らす音が響き渡る。  その瞬間、郷愁を覚えながらグリオスが眺めていた景色が変わる。 『アァ……ッ、エ、ルジュぅ……あっ、ぁ……んっ、ぁぁ――』  聞きたくもない自分の喘ぎ声。頭を振り回しながら腰を踊らせるグリオスを、満面の笑みで下から穿つエルジュ。  今寝泊りしている部屋での営み――未だ鮮明に記憶と体に刻まれた昨日の出来事。  こんなものを夢にまで見るなんて……。  体だけでなく心の底まで淫らな毒に侵された気分になり、グリオスはこの場から消えてしまいたい衝動に駆られる。  顔を背けようとしても、目に合わせて見たくもない情事の光景もともにズレて、結局真正面から見る形になってしまう。  夢が見せつけてくる事実から逃れられなくて途方に暮れていると、 「ふーん。男が喘ぐ姿なんて萎えるだけだと思ってたのに……これはこれでアリだな。充分にそそられるなあ」  背後から耳元で誰かが囁く。  低くて柔らかい声色。どこか甘い響きを含んでいて、グリオスの全身がざわつき、腰が砕けそうになる。 「だ、誰だ……っ!」  慌てて距離を取りながら振り向けば、そこには見慣れぬ男が浮かんでいた。

ともだちにシェアしよう!