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第28-2話姿なき快楽

 心は拒んでいるのに自由が利かず、グリオスは蠱惑に満ちた唇を待つことしかできなかった。だが、 「……っ……? な、なんだ? 今、唇に感触が……アッ……」  突然まだ何も触れ合っていないグリオスの唇に、柔らかな何かが押し当てられる。  次いで肌が無遠慮に撫で回される感触を覚えてしまい、戸惑いながらも喘いでしまう。  思わずグリオスが身悶えてその場に崩れ落ちてしまうと、インキュバスから「うう……っ」と苦し気な声が聞こえてきた。 「気づかれたか……勘の良い奴め。グリオスよ、今日は引き下がってやろう。だが、もし考えが変わったならば、いつでも心で俺を呼べ。しっかりと夢で愛でながら教えてやろう」  絶対に呼んでなるものかと睨みつけようと顔を上げた時には、もうインキュバスの姿はなかった。  どうやらこの場を凌ぐことができたとグリオスは安堵の息をつく。  だが今度は誰もいない夢の中で、体か過敏に感じてしまう。  口を甘く吸いながら体を愛撫される感触。姿がなくとも手つきやキスの仕方で、相手がエルジュだということがすぐ分かった。 「あっ……ぅ、ん……ッ……エル、ジュ……あぁ……っ――」  体の快楽が濃くなっていく。  意識が薄れて、体が浮遊して、何もかもがあやふやになっていく。  そして息苦しさで胸が鈍く痛む感覚が強さを増し、淫らな疼きとともに鮮明になり――

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