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第28-1話姿なき快楽
◇ ◇ ◇
「――ほう。それがお前の答えか」
思わず言葉にしてしまったグリオスの答えを聞いて、インキュバスが不敵に笑う。
「もっとお前は献身的な人間だと思っていたのだがな。ともに堕ちることを望むのか」
「……望んではいないが、アイツは俺がいなければ独りになる……そうなれば俺よりも早く堕ちて、すべてを壊す。危ういんだ、エルジュは……」
つっかえながら紡ぐグリオスの言葉に、インキュバスは何度か目を瞬かせる。それから自分の口元に手を置き、小さく唸った。
「フム……確かにあの勇者は危ういな。人の身に有り余る力を持ちながら、人の世界に執着していない。グリオスがいなくなれば、人も魔も要らぬと世界を切り裂くのだろうな――」
再び露わにした唇を、インキュバスはグリオスに寄せながら告げてくる。
「――やはり、まずは先にお前を堕とそう。そして教えてやろう。男の堕とし方を……今よりももっと勇者を悦ばせ、身も心も色欲で呆けさせて、ともに堕ちればいい。ここは夢の中だ。お前の体は勇者しか知らぬ身のまま……恐れるな。ただ知るだけだ――」
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