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第29-2話快楽の底で目覚めて

 決してエルジュは激しく動いていないのに、緩やかにグリオスの奥を穿ち続けて快感を幾重にも積み重ねていく。その上、 「グリオスってば、オレの咥え込んでから、ずーっとイきっぱなし……かわいい……オレに抱かれて、めちゃくちゃ悦んでる……大好き……」 「……ッッ! ぁ……ん、ぐ……ぁぁ……ッ……は、ぁ……」 「ハハ、好きって言ったらすっごく中締まるねー。オレのこと、グリオスの体は好きなんだよね……っ……愛されてるの、ちゃんと分かってるから……好き、愛してる……」  いつになくエルジュの声が、言葉が、甘くてたまらない。  ただの睦言。この行為自体が好きなのであって、深い恋情がある訳ではない。自分のことを本気で想っているのではない――そう思っているのに、愛し尽くされている気がしてしまう。  眠りの世界から無防備なまま目覚め、快楽にすべて囚われてしまった今。グリオスは自分を偽ることができなくなっていた。  脚をエルジュの腰に巻き付け、深く抱きかかえ、さらにエルジュを全身で感じる。  そして言葉でも想いを返したくて、グリオスは唇を動かす。  ――声は出せなかった。  なぜか知られてはいけない気がして、エルジュが見ていない間に無音で想いを吐き出した。

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