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第30-1話エルジュのほうがご立腹

「……エルジュ、分かってるな……?」  ベッドに横たわりながら、グリオスがいつになく低い声で切り出す。  隣で体を起こして座っているエルジュは、苦笑しながら肩をすくめる。 「怒らないでよーグリオス。部屋に戻ってみたら夢魔にやられていたんだもん。追い出すためにはこうするしかなかったんだって」 「……本当に俺は夢魔にやられていたのか? そうだとしても、他にやりようがあったんじゃないのか? 抱き潰さないと追い払えないなんて……っ」 「あー……それはヤりすぎちゃった。ゴメン。だってグリオスが寝言で嬉しいこと言ってくれたから張り切っちゃってさ。めちゃくちゃエロくて可愛かったし、ずっとオレの腰に脚巻き付けてイきまくってたし――」 「せ、せめて、俺が起きてからやれ! 目が覚めたらあんな状態なんて……ぅぅ……」  ひと寝入りして目覚めたばかりの今、ついさっきまでの情事が簡単に脳裏へよみがえってしまう。  決して激しい行為ではなかった。しかしエルジュからの「好き」「愛してる」がこれでもかと降り注ぎ、あまりの快感にすべてを委ね、自らも肉欲のまま貪ってしまった。  魔物にやられた人間を介抱するような交わり方じゃない。戯れのものでもない。  明らかに特別な想いを込められた行為――間違いなくついさっきまで、自分はエルジュと愛し合っていたのだとグリオスは自覚する。

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