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第47話望むのは同じだけの愛

 王の話に周りがざわめき、次第に喜びの声が上がり始める。  これが他の者ならばまたとない好機ととらえて、嬉々として話を受けるのだろうとグリオスは思う。しかしエルジュは違う。  どう反応するつもりだろうかと若干不安を覚えていると、不意にエルジュはグリオスの腕を掴み、引っ張り上げてともに立つ。  そしてニッコリと極上の笑みを浮かべて王に告げた。 「姫も玉座もいらないから。だって俺には永遠を誓った唯一の人が隣にいるし、二人でずーっとやっていきたいから。みんなの面倒なんて見るヒマないから。いつも愛でてあげないと、不安になってオレから離れたほうがいいって思いそうだもんねー」  ……おい、待て。こんな大勢の前で何を言い出す? 王からの褒美を辞退るにしても、言い方があるだろうが! やめろ、含みを持たせた目で俺を見るな。腰に手を回して抱き寄せるな。顔を近づけるな――。  怒りと驚きで全身を戦慄かせるグリオスへ、エルジュは嬉々として唇を重ねてくる。  ザワッ、とひと際大きなどよめきが起き、王も姫も唖然となってエルジュの暴走に目を剥く。そして口付けられながら、グリオスも目を白黒させるばかりだった。  ここまでやってしまえば、何が何でもと姫を褒美に渡そうとゴリ押ししなくなるだろう。それはいい。だが、二度とこの国に足を踏み入れられなくなるような恥を晒すな! こんな大勢の前で……こら、ちゃっかり腰を撫で回すなぁぁぁっ。  怒鳴りつけたいのにキスで力が抜けてしまい、グリオスの膝が折れかける。  その気配を察してエルジュは了承を得ず、ヒョイッ、とグリオスを抱き上げた。 「みんなー、良かったらオレたちのこと祝ってくれない? ここへ来る前に教会で夫婦の誓いを立ててきたんだ。オレが勇者やってるのは、ぜーんぶこの生真面目で優しいグリオスのおかげ……歓迎してくれるなら、いつでもみんなを助けてあげるから!」  周りを見渡しながら声高にエルジュが宣言すると、どよめきが歓声へと変わっていく。  まさかの祝福にエルジュは当然と言わんばかりに胸を張り、事態に動揺し続けるグリオスを見つめる。 「さあ、これからは色んな国を回って、困っている人を助けて、こうやってみんなに証人になってもらおうねー。世界中に知れ渡らせたら、グリオスも心から安心できるでしょ?」 「い、いや、そこまでしなくても十分だ……っ。お前が俺に惚れ込んでいることは十分に思い知ったから。だから頼む、こんな恥さらしはもうやめてくれ!」 「じゃあさ、グリオスからもキスしてよ。今すぐ、ここで。オレの一方通行じゃないって、みんなに教えてよ」  そんなことできるか! と言いかけて、グリオスはエルジュの目が笑っていないことに気づく。  ああ、安心したいのはコイツのほうなのか。  どれだけエルジュの愛と快楽に身も心も奪われていても、一方的に詰め込むばかりでは不安なのだ。  きっと同じだけ返さないと気が済まないのだろう。  グリオスはエルジュの腕の中で少しまごついてから、自分から首に抱き着いて唇を重ねた。  

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