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あとがき

【あとがき】  約九ヶ月の間、月葬という作品にお付き合い頂き、ありがとうございました。  本作は私、食人ずく初の長編BL小説作品で、当初は八万字程度ですっぱり終わるものをイメージして書き始めました。しかし、凪視点の裏で動く話の構想があれよという間に膨らみ、八万字ではとても書ききれなくなりました。結果、完結したにも関わらず、読者の皆様にもやついた印象を残してしまうことを大変心苦しく思います。  また一年ほどかけて、今度は零の視点から、青海、匿名についてや、なぜ凪が一年近くも自由の身でいられたのか、そして零自身のことも掘り下げていくつもりです。が、発表の方法はWebでの無料公開という形ではなくなるかもしれません。色々検討中ですので、方針が決まり次第作品紹介欄で告知させて頂こうと思っております。  さて、作品の内容に関してですが、テーマは「過去を弔う」という抽象的なものでした。過去とは子どもの頃の自分自身、思い出や後悔、色々なものを含みます。このテーマにした理由は、昨年2021年が私にとってのターニングポイントであり、大人として生きていくために自分の過去を受け入れ弔わなければいけない、そしてそれは今しか書けないと感じたからです。  ただ別れを告げるだけでは不十分で、現在の自分が一方的に過去と決別したり、殺すようなことをしてしまったら、ずっと自らの過去の亡霊に取り憑かれてしまいます。そのように苦しんでいる人を何人も見ましたし、後悔や未練というものは多かれ少なかれ人の背中に重くのしかかるものですので、誰にとっても他人事ではありません。  しかし、それだけ根深い問題でありながら、過去の弔いかたというものは検索したって簡単には出てきません。気休めでしかないけれど、この話が、過去を弔いたい方の背中を押すものになればと願い続けて書きました。  過去と向き合うのは、ときに強い痛みを伴います。身体が傷つかないからと言って軽んじられていいものでは決してありません。もしかしたらこの話も誰かの傷を不用意に抉ってしまうかもしれない、という恐怖は、書いている最中も、発表した今も消えることはなく、それでも私は私のエゴをもってこの話を世に出しました。無責任かもしれない、世間知らずかもしれない、そういう沢山の不安と重圧感の中で唯一、この話を、心の傷の消毒薬としてくれる方に届けたいという小さな願望のもとに。  最後になりますが、一番近くで私の応援者であり続けてくれたねずみさん、続きを楽しみにしてくれた友人たち、特に、話作りに協力してくれた朱紗、八里。そして最後まで根気強く、この物語を読み解いてくださった読者のあなたへ、最大の感謝と愛を。  あなたを蝕む数々の痛みが、少しでも癒されますように。 2022年3月31日 食人ずく

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