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「ほらー、早く席着けよお前らー」  うだうだ言いつつも席に着く生徒達に、うんうん、と一人教壇で頷く。  クラス替えがなかったので、クラス内に大きな変化はない。  確かに個性の強いヤツだっているし、ちょっと派手なヤツもいるけど、話してみれば、みんなちゃんとイイ奴らで。  自分も案外に慕われているんだろうと自惚れられるくらいには、うち解けていると思う。 「そう言えば先生、新しい先生が来るんだって?」 「あー、うん。何、ドコで聞いたの? 情報早いね」 「若い女の先生だったらイイのになー、センセv」 「何言ってんだよ」  愛あるからかいに、愛ある笑いを返す時に、そう感じたりするから。  案外に向いてたんだな、なんて胸の内で苦笑してから、とにかく、と騒がしくなった教室を一度静まらせて。 「新しい先生が男か女かなんてどっちでもいいから。この後始業式だから、みんなちゃんと体育館行くんだよ、解った?」  一通りの文句を最後まで聞かずに、ホームルームを終えて教室を出る。 (いっつもアイツらは一言多いんだよなー)  やれやれ、なんて苦笑混じりの溜息を吐いてから、一足先に体育館に向かった。 「めちゃくちゃカッコ良かったよねーv」 「ねーv」 「……あっ、もちろん先生もカッコいいよ」 「ねー」 「……いいよ、無理に付け足さなくても」 「だって、ねぇ?」  さっきから教室の中は女子の黄色い声一色で。男子は自分も含めてややゲンナリぐったりしている。  始業式で紹介されたのは、赤井朋弥という同い年の教師で。  本来ならオレはみんなよりも先に、男か女かも、どんな顔かも解ってるはずだったんだけど、この教師は道に迷って学校に遅刻してきていたのだ。  そんなこんなで、始業式で初めて見た赤井先生は、スラッと長い手足を持って、華奢な体に小さい顔載っけて。  そこに綺麗な瞳を埋め込んでた。  目の肥えてるはずの女子高生の殆どが、そのルックスの良さにハマってしまったらしい。  自分が赴任してきた時にも、同じような歓待を受けたことを思い出して、着任式の間中、苦笑していた。  女子高生の憧れと興味満載のキラキラした何百の瞳に見つめられるというのは、案外に怖さを秘めているもので。  あの時壇上にいた彼が、一瞬ギクリと後退ったのを見逃さなかったし、ソレを一瞬可愛いと思った自分は、どうかしていたのかもしれない。  やれやれ、と本日二度目の苦笑混じりの溜息を吐いてから。 「はいはい、その辺にして。もう終わるから」  ぱんぱんと手を叩きながらそう言って、渋々話をやめた生徒達に、よしよし、と笑ってみせる。 「ホームルーム終わったら好きなだけ喋ってね。……ってことで、今日はここまで。明日はホームルームだけだから。んで、そこで委員とか決めるから、考えとくように! じゃあ解散」  *****  始めの頃は戸惑いや、不慣れな部分もあって大変だったけれど、最近ではようやく学校にも慣れてきた。  いちいち案内図を確認しなくても校舎内を歩き回れるようにもなった。  当初は好奇心丸出しの女子生徒ばかりに声を掛けられていたけれど、最近は男子も気軽に声を掛けてくれるようになった。  職員室でも、きちんと目を見て話せるようになったし。  何よりも。 「ぁ、そだ、とも----赤井センセ」  こうして気安く話しかけてきてくれる同僚が----友人が、出来た。  同い年で、席が隣で。ノリは学生の頃と似ているような気がする。けれど、職員室では一応、体裁というものを取り繕っていた。  お互い“先生”づけで呼び合うことが、なんとなく気恥ずかしくて、呼ぶたびに苦笑してしまうけれど。 「はい?」 「明日、全校朝礼の準備に割り当てられてるんで、少し早めに来てもらえます?」 「…………オレ一人?」 「いや、オレも一緒。と……赤井センセ一人じゃ解んないでしょ?」 「……うん」 「じゃ、忘れないでね」 「はい」  小さく笑い合ってから、それぞれに仕事を片付けて、先に終わった方が「お先に」と声を掛けて帰る。  心地良い関係だった。

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