2 / 2

《おまけ》

高校を卒業する少し前。 あたしは中学の頃からずっと好きだった人に告白する決意をした。 「澤村、ちょっといい?」 ずっとバレーしか見てないその人……澤村を追いかけるように同じ高校に進んだけど、あたしと違って頭もいい澤村とは3年間同じクラスになる事はなかった。 「おう、どした?」 放課後、あたしは教室で同じバレー部だった菅原と一緒にいた澤村を人気のない女子バレー部の部室前まで呼び出して告白した。 「あたし、あたしね、中学の頃からずっと好きなんだ、澤村の事」 何もしないで卒業したらもう会えなくなるかもしれない。 勇気を出して告白したら、卒業してからも一緒にいられるかもしれない。 友達から、澤村はアンタの事好きかもしれないよ?なんて言われてあたしは淡い期待を抱いてしまって、その勢いもあって『好き』の言葉を口にした。 「そうだったんだ。知らなかった」 あたしの言葉に、澤村は驚いていた。 「済まん、道宮。気持ちは有り難いけど、俺、好きな人がいるからお前の気持ちには応えられない」 好きな人? バレーしか見てなかったはずなのに? あたしの頭は真っ白になった。 「あ、あはは、そっかぁ。なんかゴメンね、気を遣わせちゃって。お幸せに……」 なんとか言葉を紡いで、あたしは澤村から逃げるようにその場を後にした。 ワンチャンスあるかも、って思った自分が恥ずかしくなったのと同時に、澤村はいつ好きな人なんて出来たんだろうって思った。 卒業式の日。 あたしは見てしまった。 男子バレー部が使ってた第2体育館でキスしている澤村を。 その相手が、菅原だったのを。 「大地、もう行かなきゃ。誰か来ちゃうって」 「済まん、もう少しだけお前とここにいたい。お前との3年間を、もう少しだけ噛み締めたい……」 「だいち……」 あたしがいるのも知らないで、ふたりは抱き合って、またキスしてて。 完全にふたりの世界だった。 最後に澤村と話したい、って思って澤村を探してここに来てしまった事を、あたしは激しく後悔した。 澤村、菅原の事が好きなんだ。 確かにいっつもふたりでいて、その時の澤村はいっつも笑ってた。 ふたりは仲のいい親友同士なんだって思ってた。 けど、さっきのふたりはあたしの知ってるふたりじゃなかった。 恋人同士、ううん、なんだかもうずっと一緒にいる夫婦みたいな雰囲気だった。 「……っ……」 さよなら、あたしの恋。 そして、バレーボール。 あたしは、明日から新しい自分になろうって決意した。

ともだちにシェアしよう!