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《おまけ》
高校を卒業する少し前。
あたしは中学の頃からずっと好きだった人に告白する決意をした。
「澤村、ちょっといい?」
ずっとバレーしか見てないその人……澤村を追いかけるように同じ高校に進んだけど、あたしと違って頭もいい澤村とは3年間同じクラスになる事はなかった。
「おう、どした?」
放課後、あたしは教室で同じバレー部だった菅原と一緒にいた澤村を人気のない女子バレー部の部室前まで呼び出して告白した。
「あたし、あたしね、中学の頃からずっと好きなんだ、澤村の事」
何もしないで卒業したらもう会えなくなるかもしれない。
勇気を出して告白したら、卒業してからも一緒にいられるかもしれない。
友達から、澤村はアンタの事好きかもしれないよ?なんて言われてあたしは淡い期待を抱いてしまって、その勢いもあって『好き』の言葉を口にした。
「そうだったんだ。知らなかった」
あたしの言葉に、澤村は驚いていた。
「済まん、道宮。気持ちは有り難いけど、俺、好きな人がいるからお前の気持ちには応えられない」
好きな人?
バレーしか見てなかったはずなのに?
あたしの頭は真っ白になった。
「あ、あはは、そっかぁ。なんかゴメンね、気を遣わせちゃって。お幸せに……」
なんとか言葉を紡いで、あたしは澤村から逃げるようにその場を後にした。
ワンチャンスあるかも、って思った自分が恥ずかしくなったのと同時に、澤村はいつ好きな人なんて出来たんだろうって思った。
卒業式の日。
あたしは見てしまった。
男子バレー部が使ってた第2体育館でキスしている澤村を。
その相手が、菅原だったのを。
「大地、もう行かなきゃ。誰か来ちゃうって」
「済まん、もう少しだけお前とここにいたい。お前との3年間を、もう少しだけ噛み締めたい……」
「だいち……」
あたしがいるのも知らないで、ふたりは抱き合って、またキスしてて。
完全にふたりの世界だった。
最後に澤村と話したい、って思って澤村を探してここに来てしまった事を、あたしは激しく後悔した。
澤村、菅原の事が好きなんだ。
確かにいっつもふたりでいて、その時の澤村はいっつも笑ってた。
ふたりは仲のいい親友同士なんだって思ってた。
けど、さっきのふたりはあたしの知ってるふたりじゃなかった。
恋人同士、ううん、なんだかもうずっと一緒にいる夫婦みたいな雰囲気だった。
「……っ……」
さよなら、あたしの恋。
そして、バレーボール。
あたしは、明日から新しい自分になろうって決意した。
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