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楽しい時間はあっという間で、夕日が森を茜色に 染め上げた。マイルたちも遊び疲れたのか暗くなる前に自然と戻ってきた。 少しだけでも、これから始まる最後の戦いのことを 考えずに時間を過ごせたのは僕だけじゃなくみんなにとってもよかったのかもしれない。 そんなことを考えていると、こちらに向かってくる いくつかの影が空に見えた。近づくにつれて、影の正体が龍だと分かった。 ライカを初めて見たときに感じた恐怖や不安はなく 不思議と安心している自分がいた。 「ライカ、あれって···」 「我の同胞たちだ。みな生きていたのだな···」 ライカの声は喜びと驚きが入り混じっていた。 龍たちは大きな羽を優雅にはためかし、僕たちの前に降り立った。指輪を外してライカが姿を現すと、 龍たちは一斉に頭を下げた。 「我らが偉大なる王よ。再びお目にかかれて嬉しい限りでございます」 「よくぞ生きていてくれた···。もう会えないとばかり 思っていたが、長生きするのも悪くはないな」 そう言うと、ライカは優しい目で龍たちの顔を見つめて僕の方を向いた。 「我と共に闇の力と戦う転生者のケイだ」 ライカの紹介に龍たちの視線が一斉に注がれた。 「とても戦えるとは思えないが···」 「しかし、精霊の加護は感じるぞ」 「王の審美眼は鈍ってしまったのだろうか?」 それぞれ言いたいことを口にして、騒がしくなったところをライカが一喝して鎮めた。 「ケイは我と戦い、力を証明してくれた。我の決断に異論があるという者は前に出よ」 空気が一変し、緊張感が張り詰めた。 「王の決断とあらば、我らもそれに従うまで」 先頭にいる龍がそう言うと、僕にもライカと同じように頭を下げた。異様な光景にクリスたちも驚いて僕を見ていた。 「ご無礼をお許しください」 「ご無礼だなんてとんでもないです···。未熟者ですが一緒に戦う仲間としてどうか力を貸してください」 そう言って頭を下げると、龍たちの間で驚きの声が上がった。状況が飲み込めずライカに聞いてみた。 「ライカ、どういうことですか···?」 「我らに頭を下げたのはそなたが初めてだ」 「え!?」 頭を上げると、龍たちが僕を囲んでいた。 「そなたと共に最後まで戦うと誓おう」 ライカの言葉に龍たちが頷いた。 「とりあえず、話はまとまったのか?」 クリスが隣に来て聞いてきた。 「そう···みたいです」 「なんか、いよいよって感じね」 「ケイは人気者ですね!」 マイルの呑気な言葉に思わず笑ってしまった。

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