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「こんなとこにいたのね」
ジュリアの声でいつの間にか朝になってることに
気付いた。どうやらクリスの肩で眠ってしまった
らしい。
「私たちを置いて勝手に戻ったかと思った」
「それもありだな」
クリスが冗談でそう言うと、ジュリアはあからさまに不機嫌な顔になった。
「久しぶりに爆睡しました!」
「マイルはいつも爆睡でしょ」
ジュリアの突っ込みにマイルは恥ずかしそうに頭をかいた。穏やかな日差しが降り注ぐ湖は、光を反射して眩しかった。
「あっ!」
マイルが口を開いたのと同時に、ロムが水面から飛び出して華麗にジャンプした。水しぶきが上がって
小さな虹ができた。
「背中に乗りたいです!」
マイルがそう言うと、ロムが近くまで来てくれた。
「あんまり遠くには行かないようにね」
ロムとマイルは同時に頷いた。
「私もルムに乗って、森を探検しようかしら」
ジュリアがそう言うと、ルムが現れた。
「最初は嫌われてたのにな」
「いちいちうるさいわね!」
ルムはジュリアが乗りやすいように少し屈んだ。
「じゃ、また後でね」
そう言って、颯爽と森の中に消えていった。
「慌ただしいやつらだな」
クリスは嬉しそうに呟いた。
「僕たちはどうします?」
「よかったら私と話をしませんか?」
ヨミが僕たちと向かい合わせに座った。
「ああ、この世界のことを教えてほしい」
「長くなりますが、それでもよければ···」
そう言って、ヨミは光と闇の歴史について淡々と話してくれた。闇が生まれる前の世界はこの森のように美しくて綺麗な世界だったが、独り占めしようとしてかつてこの世界を治めていた王を殺した魔術士が闇の始まりらしい。
「転生者はその頃からいたんですか?」
「ええ、闇の力に対抗するために戦い命を落とした者も多いです···」
ヨミの顔が少しだけ曇ったような気がした。
「何かあったんですか?」
「いや、少しだけ懐かしくなっただけです」
「そうは見えないが」
クリスの言葉にヨミはため息をついた。
「見透かされているようで恥ずかしいですね。私にもかつて、あなた達のように心から愛しいと思える人がいました···。ケイと同じ転生者で、初めて会った時から何か惹かれるものがありました」
少し照れながらも寂しそうに話すヨミの姿になぜか
泣きそうになってしまった。
「彼も戦いで命を落とした者の1人です」
そう言って、立ち上がった。
「聞いてくれてありがとうございます···」
顔は見えなかったが、声は震えていた。
「話してくれてありがとうございます」
歩き出す背中に声をかけた。
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