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休息−1−
光の力を手に入れられた安堵とこれから始まる最後の戦いへの不安が入り混じり、なかなか寝つくことができなかった。
穏やかな風が草原を撫でる中、ジュリアとマイルは寄り添って気持ちよさそうに寝息を立てていた。
「クリス、起きてますか?」
「···ああ、どうした?」
「眠れなくて···」
「前もこんなことがあったな」
あの時は、こんなに長い旅になるなんて想像もしていなかった。
「おいで」
クリスと向かい合って座り、お互いの鼓動が聞こえそうなくらいキツく抱き合った。
「こうしてるとすごく落ち着きます」
「そうか。それならよかった」
クリスの優しい声に顔を埋めた。
「ちょっと歩くか?」
そう言うと、立ち上がって手を差し出した。
「はい」
みんなを起こさないように、大きな手を掴んでそっと立ち上がった。
「本当に美しい場所だな」
見上げた夜空には雲一つなく、宝石のような星たちがひしめきあっていた。
「クリス···僕怖いです」
繋いだ手に力が入った。
「もしこの世界を元に戻せなかったら···。僕たちならできるって信じたいのに···怖いんです」
「···俺だって怖いよ」
クリスは空を見つめたまま呟いた。
「最初は魔物に殺された家族の仇をとることが目的だった。でも、ケイと出会って旅をするうちに大切な人を失う怖さの方が憎しみよりも日に日に強くなっていった」
そう言って、クリスは僕を真っ直ぐ見た。
「俺だって人間だ。怖くないわけないだろ」
そんな当たり前のことに気づかない自分がクリスに相応しいのか分からなくなり目を背けた。
「僕···自分のことで精一杯で···」
「異世界に転生したんだから当然だ」
「···こんな僕じゃ頼りないですよね」
クリスは僕の顔を両手で包んだ。
「ケイ、俺にはお前が必要だ」
聞き覚えのある言葉に訳もなく涙が溢れ出した。
「ほんとに泣き虫だな」
クリスが微笑みながら涙を拭ってくれた。
「落ち着いたか?」
なんとか頷いて、湖のほとりまで来て座った。
歩きながら涙の理由を考えていたら、転生する前に何度も見た夢を思い出した。
「俺たちが出会うのは決まってたんだな」
その話を聞いたクリスはそう言って、僕の手にキスをした。唇から体温が伝わってきた。
「運命の相手だったんですね」
僕もクリスの手にキスをした。
星の光に照らされた色とりどりの小さな花が僕たちの未来を祝福しているようだった。
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