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第1話《序》お兄ちゃん

「お兄ちゃんって呼んで」  不意に耳元で囀ずった声にドキンッと鼓動が跳ねた。 「……ね」  フゥっと吐息が吹きかかる。 「さぁ」  熱い息が耳に落ちた黒髪を撫でた。 「お兄ちゃんだよ」  ぺしっ!! 「誰がお兄ちゃんだァァァーッ!!」 「痛ッ。お兄ちゃんを殴るなんて、いけない子だ。お仕置きだ」  ブッチュウゥゥゥー♥️♥️♥️ 「ギャアアァァァ~♠️!!」 「キスだけで感じて。あられもない喘ぎ声まで上げて……可愛い子だ」 「喘いでない!!」  心底嫌がってるの!! 「お前が喜んでしまってはお仕置きにならないな」 「話を聞けーっ」 「聞いているぞ。たった一人の可愛い弟の話を無視するわけないだろう」 「だーかーらー」  朝から俺のベッドに上がり込んで、勝手にドタバタやってる…… 「お前は」  …………………………あれ? 「お前……」  お前……  お前…… (お前は……) 「だれ?」  フフ……と。  形良い唇が弧を描いて揺れた。 「昨夜も伝えたろう。ベッドの中で」  長い指が額に落ちた前髪を掻き上げる。 「ネア・セリーニ。君にとり憑いた悪魔だ」

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