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第3話《Ⅰ章》その時、悪魔は舞い降りた!②

(一回……じゃない)  床には口を縛られた使用済みコンドームが数個散らばっている。 (一、二……)  目を背けたい光景だが、それでも床の物を目で追ってしまう。  男の持っているのも含めて、コンドームは三個。 (少なくとも三発)  じぃー  長身で程よく筋肉のついた赤髪の男。  じぃー  視線を俺に戻して、自分の全体図を見つめる。  どう考えても、この体格差。 (俺がヤられる方だ……)  万に一つも俺が男を抱いた望みはない。 (うぅ)  お尻のあらぬ場所がジンジンする…… 「うぅぅ」 「泣くな。昨夜の君は乱れて可愛かったよ」  なでなで。  大きな手が頭を撫でてくれるけれど、何の慰めにもならない。 (記憶が何もない)  思い出せない。俺は昨夜なにをしていた? 「ベッドの中で約束したろう」 「………」 「今朝はお兄ちゃんプレイをするんだよ」 「………」 「さぁ、呼ぶんだ」 「………」 「お兄ちゃん……って言ってごらん」  💢💢💢 「さっきから五月蝿(うるさ)いわーッ!!」  人が必死に昨夜の記憶を呼び覚ましている時に。 「何がお兄ちゃんだー!!」 「落ち着け、弟!」 「弟じゃない!」 「約束を破るのは、お兄ちゃん許さないぞ★」 「お兄ちゃんプレイしないっつってんだろ!」 「ちょっ、痛ッ。枕で叩くな」 「大体、俺は大事な後ろの貞操奪われたんだぞ」 「つぶらなオスマンコも、恥じらう君も可愛かった。キュンキュンしたよ」 「キュンキュンするな」 「ちんこはギンギンだ」 「性欲の塊か!」 「君への愛の塊だ」  でん★  黒いピッチピチおパンツの中で盛り上がったソコが、今にも「こんにちは」しそう。  くっきり性器の形に薄い布を押し上げている。 「ギャアァァァー♠️」 「朝から元気印の愛の塊だよ♥️」 「黙れェェェーッ!!」  プシュウウゥー  枕が脳天にクリーンヒットした。頭から湯気出して寝とれ。  おやすみなさい💢 (たくっ)  朝から叫びすぎて喉痛い。  お隣さんに怒られちゃうよ。ここ、アパートなんだからな。  既に出勤したのか、お隣さんが留守なのはせめてもの幸いだ。  ベッドの上で気を失って、のびている悪魔を見下ろす。 (まったく……いい気なもんだ。寝たいのは俺の方なのに) 「昨夜は死にかけたんだぞ」  …………………  …………………  …………………  あ。 (思い出した)  俺、昨日、トラックに轢かれたんだ。

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