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第24話他人の恋路を邪魔する者は

「服を脱いでひざまづくんだ」 その中年男に命じられるままに、コウは、震えながら服を脱いで全裸になるとベッドから降りて、男の前にひざまづいた。 男は、コウに命じた。 「まずは、奉仕してもらおうか」 男がいうと、コウは、男のズボンの前へと手を伸ばし、そこから男のすでに半立ちになったものを取り出して口に含んだ。 男は、コウの頭を押さえてぐぃぐぃと押し込む。コウが、苦しげにえづくがかまやしない。 コウは、涙を流していた。 しばらくすると、男は、言った。 「出すぞ。一滴もこぼすんじゃないぞ」 「うっ、ぐっ・・んっ・・」 コウが呻いて、男の吐き出したものを飲み下した。 「まぁ、いいだろう。後ろを向け」 男は、コウが背を向けると腕を振り上げて鞭を振り下ろした。パァン、という乾いた音がして、こうが呻いた。 男は、続けざまに何度もコウの背中を打った。 「んぅっ・・ふっ・・」 皮膚が破れて血が滲んで、コウが、顔を歪める。 「はっ・・あっ・・」 「この、役立たずの化け物が!」 男は、息を荒らげて、なおも、コウを打ち続けた。コウは、声を殺して耐えている。 なんで? 俺は、もう、見ていられなくって、男に向けて念話を送った。 なんで、こんなことするんだよ! もう、やめてくれ! 俺の心の声が聞こえたわけではないようだが、男は、息を弾ませながら、頭を振った。 「どうされましたか?」 レイブンがきくと、男は、なおも、頭を振って、答えた。 「少し、頭痛がしただけだ」 男は、気を取り直したかのように、コウに向き直ると、命じた。 「ベッドに横になれ」 「お待ちください。陛下」 レイブンが男に声をかけた。 「陛下は、体調が優れないご様子。今日のところは、ここまでにされたほうが。それに、これもまだ、調整中です。少し、『Rー15』との戦いで無理をさせてしまったので」 「何?」 男が不満げにレイブンを睨み付けた。 「私の命令に逆らう気か?」 「いえ、違います」 レイブンが答えた。 「御身が大切であるから言っております。これは、所詮は、正体不明の魔導書です。無理をされれば、何が起こるかもわかりませんので」 「ふん」 男は、踵を返して部屋から出ていった。後には、傷ついたコウと、レイブンが残された。 レイブンは、コウを抱き上げるとうつ伏せにベッドに寝かせるとベッドに腰かけて取り出した薬をコウの背中に塗った。 コウは、たぶん、首輪に仕込まれている魔石のせいで、魔法が使えずに自分で傷を治すことができない。 「気休めにすぎんが」 レイブンがそっと手をコウの背にかざした。 「ヒール」 微かな光が手のひらから溢れる。 ヨワっ! レイブン、魔力、弱すぎ! 「お前、聞こえてるぞ!」 えっ? 俺は、きいた。 俺の声がきこえてるのか? 「それぐらいは、きこえるさ。俺だって、魔族の血が流れてるんだ」 マジで? 俺は、思わず言った。 魔族の血が混じってて、その魔力なの? 「魔族が皆、化け物みたいに強いわけじゃねぇんだよ」 レイブンが俺に言った。 「俺のお袋は、力ない魔族で、人に捕らえられて奴隷として売られ、この城にきた。そして」 レイブンが憎々しげに顔を歪める。 「あの男のペットとなった」 ええっ? 俺は、驚愕してきいた。 じゃあ、もしかして、レイブンは・・ 「ああ」 レイブンが頷く。 「あれは、俺の父親、だ」 マジか。 俺は、レイブンにきいた。 あんた、まさか・・ 「ふん」 レイブンが鼻で笑った。 「俺の存在は、認知されていない。俺の立場は、奴隷と変わらん」 「レイブン」 コウがレイブンの方を見て、力なく微笑んだ。 「ありがと」 「別に、お前をかばった訳じゃねぇし。本当に、お前を抱いてる途中であいつになんかあったら不味いしな」 レイブンがそう言うと、コウは、くすっと微かに笑った。 「レイブンは、優しいね」 「なんで、そうなるんだよ、お前は。脳ミソ沸いてるのか?」 レイブンは言いながら、そのヨワヨワしいヒールをコウの背に向かってかけ続けた。 コウ、大丈夫か? 俺は、コウにきいた。コウは、答えた。 「平気、だよ。これぐらい、いつもに比べたら、全然、ましだよ」 いつもに比べたら、って、こんなこといつも、されてるのかよ? 俺にきかれて、コウが、逆に俺にきいた。 「ユウは、されてないの?」 俺は、そんなことは、されてないよ。 「マジで?」 コウがきいた。 「じゃあ、どんなことされてるの?」 ええっ? 俺は、口ごもった。 どんなことって・・ 俺の脳裏にアークにされた、あんなことや、こんなことが浮かんできた。すると、コウがぽぅっと頬を真っ赤に染めてうつ向いた。 「そ、そんなこと、してるんだ」 コウも、レイブンとしてるんじゃねぇの? 俺がきくと、コウだけじゃなくレイブンまで真っ赤になってしまった。 「お前、そんなこと、してるわけがねぇだろうが」 だって、抱いてるかって、アークにきいてたじゃん。 俺が言うと、レイブン慌てて答えた。 「そりゃ、言ったけど、俺が言ったのは」 レイブンがコウを抱き締めた。 「レイブン・・」 「こういうことだよ!」 何? 俺は、しらけた気分できいた。 ハグのことかよ? 「悪いか?」 「レイブン・・」 コウがレイブンの腕にしがみついて、目を閉じたまま言った。 「僕は、いいんだよ。レイブンになら何されても」 「はい?」 レイブンがコウを抱いたまま、キョトンとしている。 「お前・・」 「レイブン、僕のこと、抱いて」 「抱いてるじゃないか」 「こんなのじゃなくって、あの、ユウたちみたいに、して、ほしい」 「バカなこと、いうな」 レイブンがコウから体を離した。 「俺にあいつと同じこと、お前にしろっていうのかよ?」 「レイブン・・」 「お、こ、と、わ、り、だ」 レイブンは、コウにキッパリと言った。 「俺は、あいつとは違う。お前を抱いたりしない」 「レイブン」 レイブンは、そのまま黙って部屋から出ていった。 コウは。 コウは、静かに涙を溢していた。 俺が捕らえられて1週間の間、そんなことが毎日のように続いた。 コウは、少し、頬が赤らんで、たぶん、熱が出てるんだと思う。 レイブンは、コウの背中に薬を塗ってやったり、濡れた布でコウの体を拭いてやったりしている。 けど。 コウは、レイブンの手を振り払って言った。 「僕のこと、好きでもないくせに、もう、僕に触れないで!」 「お前」 「僕の名前は、コウ、だよ。ユウがつけてくれたんだ」 コウは、続けた。 「僕のこと、本当に自分のものにしてくれもしないのに、優しくしないで!」 「お前・・」 「コウ、だよ!」 コウは、言った。 「僕は、お前じゃない!コウ、だよ!」 「コウ・・」 レイブンが突然、ぎゅっとコウを抱き締めた。 「レイブン?」 「コウ、お前は」 レイブンが呻いた。 「俺を獣に戻す気か」 レイブンの体が震えたと思うと、巨大化していった。 レイブンの金色の髪が伸びてタテガミになる。 変化していく。 レイブンは、獅子の姿になって、コウを抱いていた。 「もう、止められんぞ、コウ」 「うん」 コウが、頷いた。 「レイブン、僕を、あなただけのものにして」 マジで? 俺は、ベッドのすみに置かれたまま思っていた。 俺、ここにいるんですけど!

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