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第1話
家中がその結果に愕然とした。
母は泣き崩れ、父はソファに座り込んで頭を抱えた。
「何でだ?」
父の口から無意識に出た言葉に俺の心にできた傷は深く抉られて、口の中に鉄の味が広がる。
そんな俺にとっては地獄絵図のような中で、あいつはこの場にそぐわないほどのあっけらかんとした声でなんて事のないようにとんでもない事を言い放った。
「なぁ、俺はどっちでもいいんだけど?」
突然の言葉に何のことだと顔を見ると、やるよと持っていた紙を俺の目の前で振る。
そこには俺の結果にはなかったαの文字。
「どう言うことだ?!」
俺が食ってかかる前にいつのまにか俺の後ろにいた父が振られていた紙を引ったくるように奪った。
「いいのか?」
父が問うと、あぁと頷いて指を一本立てた。
「一つだけ願いを叶えてもらう。」
言わなくても皆がわかっている、あいつの願い。父が俺を見てからあいつに向き直り、それでも何がしたい?と答えた。
「俺達を番と認めろ。」
そう言うと父の顔をじっと見つめる。そんな二人の間に割り込むように俺が大声を出した。
「俺は、αじゃなくてもこの家を立派に継いでみせます。それだけの努力を俺はして来た。Ωだからだなんて言わせはしません。だから、俺をこのままこの家の後継に、そしてきちんとした相手を娶り…しかしその時にはαの血を、俺には残せないαの子をこいつで作ればいい!父さん、どうか俺にチャンスを下さい!俺はこいつと番だなんて絶対に嫌です!」
俺の必死の訴えに母が俺を見るが、その目にはありありとそうは言ってもあなたはΩなのよと言っているのが見て取れる。
父は、見るまでもない…分かっている。Ωには選択肢も希望も人権すらもない。
あいつが俺に近付く。身震いするほどに嫌で、今すぐ突き飛ばして逃げたい。
だが、俺にはこの家しかない。ここで、αとしてこの家を継ぐ。
それには…
「おい。」
手が差し伸べられる。
父も母も俺達を見ようともしない。
兄弟で双子で、この世で一番嫌いなこいつと俺は番になるのか…?
冗談じゃない!
手を掴もうとしない俺にあいつはふふっと笑うと嫌がる俺の手を無理矢理掴み、行きたくないとしゃがみこんだ俺の体を軽々と抱き上げると、父と母に手を伸ばす俺に無駄だと囁いて扉を開けた。
廊下に出て扉が閉まる瞬間、顔を見合わせてほっとため息をついた両親を見て、もう俺を守ってくれるものは何もないんだと実感した。
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