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2.思い出のミックスジュース(3)

「大丈夫そうだね。それじゃあ俺も安心したことだし、会社に行ってくるよ」 「うん。一緒に来てくれてありがとう、お兄ちゃん。気をつけてね」 「ああ。クラスの子たちと仲良くな」  俺はしばしの別れを惜しみ、ミオの頭を優しくなでなでする。  と、それがミオの甘えんぼうスイッチをオンにさせてしまったのか、ミオは突然、俺に抱きついて甘え始めた。 「お兄ちゃん……さみしいよ」 「ミオ……」  ――思い返せば、俺が小学校に入学した時も、こんな風にお袋に連れられて登校したんだったな。  いつも一緒にいてくれた両親と離れて、本格的な集団生活を送ることに、期待と不安の両方の気持ちがあった。  ただ、どちらかというと不安な方が強かった俺は、お袋にしがみついてなかなか教室へ行こうとせず、先生たちを困らせていたっけ。  そんな俺だからこそ、今のミオの気持ちは痛いほど分かっているつもりだ。  この子もまた、クラスになじめるのか不安に思う事もあるだろうし、一時的とはいえ、唯一の保護者である俺と離れることのさみしさは、察するに余りある。 「お願い、早くお家に帰ってきてね」 「うん。約束するよ」 「ありがとう……」  泣きそうになるのを必死でこらえているミオを見て、俺は、この子がかわいそうで、とてもいとおしくて、離したくないとさえ思ってしまった。  一体俺はどうしちまったんだろう、こんなはずじゃあなかったのに。  昨日までは、学校で共同生活を経験させることがミオのためだからと思って、気持ちよく送り出すつもりでいたのに。  なかなか気持ちの整理がつかない俺は、結局、時間いっぱいになるまで、ミオのそばにいてあげようと決意したのであった。

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