10 / 833

2.思い出のミックスジュース(2)

 今日からは、いよいよミオの学校生活が始まる。  毎日はさすがに無理だけど、登校初日くらいは学校まで一緒に行ってあげようと心に決めていたのだった。  俺たちは早めの朝食を終え、それぞれ出勤と登校の準備を始める。  ちょっと大きめな、黒いランドセルを背負ったミオ。  その姿はどこか初々しく、そしてぎこちなかった。 「どうかな。ボク、変じゃない?」  ミオが体をくるくるさせながら、心配そうに聞いてきた。なにぶんにもランドセルを背負うのは初めてだし、自分の服装にマッチしているかどうかが気になるのだろう。 「大丈夫。よく似合ってるよ」 「ほんと? よかったぁ」  最近のランドセルは実にバラエティーが豊かで、黒と赤以外にも水色やピンクなどの派手な色のものもあるし、豪華な模様が施されたものも普通に陳列している。  ああいう品揃えを見ていると、男の子だから黒一色じゃないといけない、という規則や価値観も今は昔のものになってしまったようだ。  ランドセルも今や、多様性の時代なのである。  そう考えると、ミオに買ってあげた黒のランドセルは、ちと地味だったのではないか、という気がしないでもない。 「さ、行こうか」 「うん!」  出発の準備を終えた俺たちは、仲良く手を繋いで学校へと向かった。  道すがらでおしゃべりをしながら、前日に学校の事務員さんからもらった地図を頼りに通学路を歩く。  すると、およそ十数分くらいで、ミオが通う小学校の正門が見えてきた。  これくらいの距離なら、たぶんミオも明日からは道に迷わずに通えることだろう。  なにぶん登校初日なので遅刻はさせられないと、ちょっと早めに家を出てみたのだが、俺たちが学校に到着したのは午前七時半前。  どうやら、この時間帯に登校する児童はそんなに多くないようだ。  各教室はもちろん、休み時間には賑わっているであろう校庭にも、ほとんど人気らしいものは見当たらない。 「ミオ、教室の場所は分かる?」 「うん。お兄ちゃんがくれたプリントに書いてあったから、それを見ながら行くね」 「そっか。えーと、忘れものはしてないよな? 教科書とか、筆箱とか……」 「大丈夫だよ。昨日、全部ランドセルに入れちゃったの。ほら」  そう言って、ミオは背負っていたランドセルを開ける。中には教科書とノートが数冊、そして今流行りのアニメキャラクターが描かれた、かわいい筆箱がしっかりと収納されていた。  ノートは学校が推奨するものを買ってきたのだが、この筆箱だけは俺のチョイスである。  この筆箱がきっかけになって、クラスメートと会話が弾めば友達も作りやすくなるのではないか、と思ったのだ。

ともだちにシェアしよう!