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9.ほろ苦い失恋話(2)

「情けない話なんだけど、俺が女の子にフラれた時の事なんだよ」 「え。お兄ちゃん、女の子にフラれた事あるんだ?」  ミオが意外そうな顔をする。 「そりゃまぁ……この歳まで独身なわけだからな。一度もモテた事ないしね。俺みたいなのが女の子と付き合うためには、自分から告白するしかないんだよ」 「そうなんだー。じゃあさっきまでは、ほんとに告白してフラれた夢を見てたの?」 「うん。んで、フラれた時に言われたセリフが今でも頭の片隅に残ってたから、それが夢に出てきたんだと思う」 「だからうんうん唸ってたんだぁ。お兄ちゃん、よっぽどひどい事言われたんだね」 「そうだなぁ。最初に女の子に告白したのが高校一年生の時なんだけど、その子には『恋愛対象として見てない』ってきっぱり断られてさ。ものすごくショックだったよ」 「レンアイタイショウ?」 「そう。簡単に言うと、恋人としてその人を見られるかどうか、かな。それがまず一件」 「へぇー……って? じゃあ他にもフラれた事があるの?」  あ。とんだヤブヘビだった。 「えーと。あ、そろそろ会社に行く準備しなきゃいけないから、その話はまた今度にしよう。ほら、ミオも早く学校に行く支度しないと」 「お兄ちゃん、今日は土曜日だよ。会社も学校もお休みでしょ」 「うっ」  冷静な突っ込みを入れられて、返す言葉を失ってしまった。  そうなのだ。俺が営業職として勤める会社は、今時の中小企業としては至極珍しい、週休二日制プラス祝日も完全オフを社是(しゃぜ)としている、超ホワイト企業なのである。  そういうところが気に入って、俺がこの歳まで仕事を続けてこられたところもある。  ミオが通う小学校も、全国の公立小学校で導入された学校週五日制という制度のおかげで、土日はまるごと休みなのであった。 「ね、他には何を言われたの? 教えてよー」 「ミオ、そんなに知りたいのかい?」 「うん。ボク、お兄ちゃんの恋愛のお話、いっぱい聞きたいの」  おませな子だなぁ、と思ったがミオももう十歳だ、そろそろ惚れた腫れたに興味を持ってもいい年頃なのかも知れない。  さっきまで俺が見ていた夢の内容は、恋愛というより失恋オンリーの苦い経験なんだけど、それでも反面教師という意味では参考になるのかな。  ミオもこんなに聞きたがってることだし、今まで俺の胸の中でくすぶり続けてきたモヤモヤを吐き出すいい機会だと思って、あの件も話してしまうとするか。

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