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9.ほろ苦い失恋話(1)

「ごめんなさい。私、柚月(ゆづき)くんの事そういう目で見てないから」  大ショック! 初めての告白で、勇気を振り絞ったのにー。 「柚月さん、いい人だとは思ってるけど、そこまでだから。このままお友達でいましょ」  男をフるのに使う〝いい人〟って、男を傷つけない魔法のフレーズだよなぁ。 「義弘(よしひろ)、もう少し上手だと思ってたけど残念だわ」  これはもう致命的だよ。だって、男としてダメな奴だって言われてるようなもんなんだから。 「……ちゃん、お兄ちゃん!」 「う、うーん……許してくれぇ、どうせダメなんだよ俺なんて」 「もう! 何言ってるの?」  さっきから、誰かが俺の体を揺さぶっているようだ。  誰だか知らないが、放っておいてくれ。俺はこのまま殻に閉じこもっていたいんだよ。 「お兄ちゃん! 起きてぇー」 「んがっ!?」  突然何かが俺の体の上に乗っかってきたので、その重さと衝撃にびっくりして目が開く。  その〝何か〟の正体は爽やかなブルーのショートヘアを持つ美少女、ではなく、男の子だった。 「ミオ……?」 「よかったぁ、やっと起きたんだね」  ミオはホッとした表情で、俺の胸に頬をすり寄せた。  どうやら俺は、深い眠りについている間に嫌な夢を見て、相当うなされていたらしい。  その様子を見て心配したミオが、何とかして俺を起こそうと奮闘してくれていたようだ。  だが何度揺さぶっても奇妙な寝言しか言わないので、結局、俺の体に全体重をかけるように乗っかって、起こす事にしたのだという。  その作戦が功を奏し、俺はようやく夢の世界から現実に引き戻されたのだった。 「大丈夫? お兄ちゃん。ずっとうんうん唸ってたからすごく心配したんだよ」  俺の体にまたがっていたミオが、体を起こした俺の横にちょこんと座った。 「ご、ごめんごめん。ちょっと嫌な夢を見ていたみたいでさ」 「嫌な夢?」 「うん。昔の事を夢で思い出しちゃってね」 「昔の事ってどんな事?」  まぁ当然興味を持つよな。  ミオには俺の過去について結構喋った方だと思うが、うなされるほどの夢を見るくらい苦い経験をした事に関しては、全く話をしていなかった。  今、この場で隠し事をしてもミオが不信感を募らせるかも知れないし、最初に言われたあの件だけは話してあげようか。

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