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13.憧れのウサちゃんパーク(3)

「そうだね。だから、ゲームセンターの事は忘れて、ちょっと空いてるところに行こっか」 「空いてるところ、あるの?」 「いくつかあるよ。例えば〝ウサちゃんパーク〟とかどうかな」 「ウサちゃんパーク?」 「うん。そこはだけを飼ってる動物園なんだけどね。意外と穴場みたいだよ」 「そうなんだ! ボク、ウサちゃんだーい好きだよ」  お、これは思わぬ収穫!  ようやくミオの表情が明るくなり、俺はホッと胸を撫で下ろした。 「ね、そこってウサちゃんに触ってもいいの?」 「そうだなぁ……基本的にウサギは繊細な性格らしいけど、中には甘えんぼうなのもいるから、きっと触れ合えると思うよ」 「いいなぁ。ボク、そこに行きたーい」 「よーし。それじゃ今度の休みは、一緒にウサちゃんパークへ行こう」 「うん!」  この間の海釣り公園とは違い、ウサちゃんパークに行くのは俺も初めてだ。  以前読んだ情報誌によると、近年は新しく出来た動植物園に客を食われ、かつて繁盛していた時のような来客は無いらしい。  という事情を(かんが)みると、穴場になっている理由も何となく分かる。  そんなウサちゃんパークが経営を続けられているのは、たぶん、ミオのようなウサギ大好きっ子たちの根強い支えがあるからだろう。  とにかく、これで次のデートスポットが決まった。  いくら穴場とは言っても、さすがに日曜日はお客さんも増えるはずだから、連れて行くのは土曜日にしよう。  ――そして迎えた、月末の土曜日。本日の天候は、若干の雲が掛かっているものの、おおむね快晴だ。  俺たちはマイカーに乗り、山を一つ越え、三十分ほど走ったところにある目的地、ウサちゃんパークへとやって来た。  外観を見た感じ、思っていたよりこじんまりとした施設かな、というのが第一印象だ。  建物はさほど大きくないし、併設されている駐車場も、普通車が十数台止められるほどのスペースしかない。  まぁそりゃそうだよな、飼育している動物がウサギだけなのに、やたらめったら広くしても仕方がない。  むしろ、このくらいの規模でちょうどいいくらいだ。  あと、入場門の横に立てられた、職員さん手描きのものと思われるウサギの絵が、何とも微笑ましかった。  ここ、ウサちゃんパークは券売機で入場券を買い、入場門にて半券をしてもらうシステムのようだ。  俺たちは、受付の職員さんに大人用と子供用の入場券を見せ、半券と引き換えに、園内マップが描かれているパンフレットをもらった。  入場門を抜けて園内に入ると、乾燥させた牧草らしき香りが一面に漂ってくる。  時刻は午前十時を少し回ったところ。開園してすぐなので、まだ客足もまばらだ。 「ね、最初はどこに行くの?」 「この園内マップによると、『まずはいろんなウサギさんを見てみましょう』って書いてあるな。たぶんあっちの方だね」  と、俺は左の方にある通路を指差した。 「ウサちゃんって、そんなにたくさんの種類がいるんだ?」 「どうやらそういう事みたいだな。とにかく行ってみようよ」 「うん。楽しみー」  俺はミオの手を引き、この施設最初の見どころである〝世界のウサギさんステージ〟へと向かった。

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