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13.憧れのウサちゃんパーク(2)
「ねぇお兄ちゃん、ゲームセンターって何するところなの?」
「えーとな。基本的には、大きな画面に映した、テレビゲームみたいなものを遊ぶお店なんだけど……」
とまで説明したが、ミオはまず、テレビゲームが何なのかを分かっていないんだった。
「その他には写真を撮ったり、メダルを使って遊んだりするお店もあるよ」
「お店で写真を撮るの?」
「うん。仲のいい友達とか、恋人同士で一緒に写真を撮って、機械から出てきた写真をシールにするんだ」
もっとも近年では、シールにして保存するよりも、SNSにアップロードして〝イイネ〟をもらう方が主流らしいのだが、俺も最新のプリントシール機事情は詳しくないので、学生時代の知識だけで解説した。
「後はぬいぐるみをクレーンで取るゲームもあるし、とにかく賑やかな場所だよ」
「人が多いの?」
「休日は多いだろうね。ミオも行ってみたい?」
「うーん」
てっきり即答で行きたがるものだと思っていたが、ミオは再び、ソファーに腰を下ろして考えだした。
いつもは喜んで行きたがるミオがここまで考え込むという事は、さっきの説明では、あまりゲームセンターに興味が湧かなかったのだろうか。
「ボク、あんまり人が多いところには行きたくないな……」
しばらく下を向いていたミオが、ポツリとつぶやく。
なるほど、そういう理由だったのか。
きっとこの子は俺と一緒で、人混みが苦手なタイプなんだ。
先日アジを釣りに行った、あの海釣り公園では、常連や家族連れの人と競合しない、空 いた釣り台を選んで釣りをした。
その判断は偶然ながらも、結果として正解だったんだな。
となると、今度行ってみたいと話をしていた遊園地なんかも、実はアウトなのではないか?
あそこは某夢の国ほど大賑わいする事はないが、それでも土日祝日はそれなりにごった返すし、待ち時間も当然発生する。
だからと言って、学校を休ませてまで平日に連れて行くなんてのは、里親としての道義にもとる。
うーん、難しい問題だな。
休日でもあまり混まないで、ミオが楽しく過ごせそうな場所と言えば、どこがあるだろうか……。
「ごめんねお兄ちゃん、ボク、わがまま言っちゃってるよね」
「そ、そんな事ないよ。俺が勝手に提案しちゃっただけなんだから、気にしなくていいって」
俺は、下を向いたまま申し訳なさそうにしているミオの肩を抱いた。
「それに、実は俺も、人が多いのは苦手なんだ」
「そうなの?」
「うん。テレビで観光地なんかの紹介をしてる時にさ、『芋の子を洗うような混みよう』って言うだろ? ああいう雰囲気は好きじゃないんだよ」
「だよね。あれじゃせっかくのデートなのに、二人っきりになれないもんね」
ここでも〝デート〟というフレーズが出て一瞬ドキッとしたが、これについて深く考え込むと、また俺の悪い癖が出てしまう。
この子は単純に、外出先でも二人っきりで過ごす事をデートと呼んでいて、その二人っきりを望んでいるのだ。それ以上、他意はないはずである。
という事にしておいて、俺は話を続けた。
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