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13.憧れのウサちゃんパーク(1)
ミオが散髪をした明くる日の晩。
俺は隣で肩を寄せ、テレビを見ているミオに、とある事を尋ねてみた。
「ミオ、施設にいた時は何して遊んでたの?」
「んーとね、いつもやってたのは、お絵描きとか、ブロック遊びかなぁ」
「ブロック遊びって、おもちゃの?」
「そだよ。デコボコのあるブロックをくっつけて、いろんなものを作るの」
なるほど、要するに知育玩具の類か。
「他にはかくれんぼしたり、おままごともよくやったよー」
「おままごとかぁ、懐かしいな」
「ボクがお嫁さんになって、おもちゃの包丁とかお野菜を使って遊ぶんだけど、結構楽しかったなぁ」
「お嫁さんか。ミオにぴったりな役かもね」
「ぴったり? ボクが女の子っぽいから?」
「うん。かわいいお嫁さんになれそうだと思ってさ」
「それって喜んでいいのかなぁ」
ミオが首を傾げて考え込んだ。
俺がおままごとに参加した時は、だいたい会社帰りのお父さん役をやらされたものだ。
今ではそれがほぼ現実のものになったわけだが、あれって、俺が老け顔だから適役だと思われてたのかなぁ。
「ゲームはした事ある?」
「ゲーム? トランプとか、〝数字当てゲーム〟みたいなの?」
「えと、テレビゲームとか、携帯ゲームの事なんだけど……」
「何それ? 知らなぁい」
ミオが軽く首を振った。まぁ案の定というか、そういう反応になるよな。
というのも、ミオがいた児童養護施設では、アニメどころか、テレビ自体をほとんど見せない教育方針だったそうなのだ。
そういう環境で育ったミオにとって、ゲームといえば、その施設にあったアナログゲームの事だと思うのも無理はない。
この家に迎え入れて、初めてテレビゲームや携帯ゲームの情報が耳に入るようになったものの、まだそれが、何であるのかは理解しきっていないのだろう。
学校通いを始めたミオが、ゲームの話題について行くには、実際にプレイしてみるのが一番だ。
でも、流行を追い求めるだけのために、ゲームに触れるってのも何か違う気がする。
ゲーム機だけに限らず、全ての玩具において、ミオ本人が興味を示し、遊んでみたいという気になるまでは、むやみやたらに買い与えるべきではないのかも知れない。
「あ。ゲームって言えば」
ミオが何かを思い出したのか、ふいに立ち上がった。
「クラスメートの男の子がね、こないだ〝ゲームセンター〟ってところに行ってきたってお話してたよ」
「へぇ、ゲームセンターか。一人で行ったのかな?」
「んーん、親と一緒に行ったんだって。そこ、子供だけじゃ入っちゃいけないみたいなの」
「そっかぁ。結構しっかりしてるお店なんだね」
昔のゲームセンターは薄暗くてシンナー臭くて、常に不良学生がたむろしていて、ミオくらいの小さな子をとっ捕まえてはカツアゲしていたと聞くが、そんな無法地帯も今は昔の話なんだな。
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