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15.ショタっ娘と妊娠(3)

「ミオ。赤ちゃんはね、大人になった男の人と女の人が愛し合ってできるんだよ」 「『愛し合って』って、なーに?」 「分かりやすく言うと、好きな人同士で一緒になるって事かな」  と、含みを持たせた説明をする。 「それって〝結婚〟するって事?」  おっ、これはいい傾向か?  ミオが結婚というフレーズを口にしたことで、うまい具合に、話題の核心から離れつつある気がする。 「そうだね。みんな好きな人と結婚して、一緒に暮らしていれば、そのうちに赤ちゃんができるんだよ」  まだ性教育を受けていないミオに、どうやったら赤ちゃんができるのかを、いかに婉曲的(えんきょくてき)に伝え、納得してもらうかは重要な課題である。  かような事情を踏まえた上で、結婚をすればゆくゆくは赤ちゃんができるというのは、一般論としては正しく婉曲的にした説明だろう。  赤ちゃんだけが欲しい独身女性が、とある方法でお腹に宿す手段もあるのだが、今はそんな特殊なケースの話をするような状況ではない。  無い知恵を絞って頭をフル回転させすぎて、そろそろ脳が疲れてきたな。  歯医者の帰りがけに、何か甘いものでも買ってくりゃよかった。  ミオがこの説明で満足してくれるといいんだけど。 「じゃあ、ボクとお兄ちゃんが結婚しても、赤ちゃんはできないの?」 「え! 俺と!?」 「うん。お兄ちゃんと」 「そそ、そりゃそうだよ。さっきも言ったけど、妊娠は女の人じゃないとできないんだからね」 「でも、ボクってみんなから女の子っぽいって言われるでしょ? だから、ボクでも妊娠できるのかなぁって思って」 「ははは、まさかそんな……」  俺は一笑に付したつもりだが、その顔は引きつっていた。  某ハリウッドスター主演で、男が妊娠するというトンデモ設定なコメディ映画が話題をさらった事はあるが、あれはあくまでも映画の中の話であって、ファンタジーだから。  現実世界において、男の、しかも年端も行かないミオのようなショタっ娘が妊娠する事は果たしてあり得るのか。  いや、無いな。現在の科学技術では不可能だし、仮に可能だったとしても、倫理的に認められないだろう。  でも当のミオは、割と真剣に、自分でも妊娠できるのかどうかを考察しているようだ。  まぁ、あれだけ女の子と間違えられたら、自分でも可能なんじゃないかと錯覚を抱きもするか。  その錯覚を抱かせるに至った原因は俺にもある。だから、そこはきっちり線引きしておいてあげないといけないな。 「そう考えるのも分かるけど、男は絶対に妊娠しない体のつくりになっているんだよ。ミオみたいにかわいい子でもね」 「そうなんだ。男の子ってつまんないね」  ミオが残念そうな顔をする。  果たしてその言葉と表情には、どういう意味があるんだろう。  その身に赤ちゃんを宿せない事になのか、あるいは、まさかとは思うが、俺と結婚できない事に対してなのか……。

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